「早く帰りたい」住民に疲れ 避難所の「密」防ぐ工夫も

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 大規模な土石流から一夜明けた4日、静岡県熱海市内に設けられた避難所には被災した伊豆山地区の人が身を寄せ、一様に疲れた表情を浮かべた。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための消毒液も置かれ、感染対策にも気を使いながらの避難生活が続いた。

 4日午前の段階で約50人が避難していた市立熱海中学校では、島幸子さん(58)が一足先に同校に避難していた夫久生さん(58)と再会した。幸子さんは前夜、勤務先のホテルに泊まった。互いに電話でやりとりしていたが、「会って無事が確認できてほっとした」と笑顔を見せた。

 ただ、避難所でも土砂災害の危険を知らせる「エリアメール」が何度も鳴った。「いつまでこんなことが続くんでしょう」と幸子さん。生まれも育ちも伊豆山という久生さんは「とにかく早く家に帰りたい。静かな町でこんなことが起きるなんて」と話した。

 後藤光雄さん(75)は、足が悪い母てるこさん(99)と身を寄せた。杖をついて歩くてるこさんを自宅で介護する。前日は自衛隊に避難をうながされ、車で避難した。

 避難所ではスティックパンやおかゆが配られ、4日には畳と仕切りも設けられた。だが、体育館とトイレは別の場所にあり、てるこさんが1人でトイレに行くたびに心配になる。ホテル泊も考えたが、ホテルまで歩くのが難しいためあきらめた。

 市総合福祉センターに避難した三橋加代子さん(74)は「雨が降り続けていて怖い。早くやんで、家に帰れるようになってほしい」とこぼした。

 土石流が起きた時は自宅にいた。ふと窓の外を見ると、電柱が揺れていて、外をのぞくと近くの道路を土砂が流れていたという。急いで高台にある知人宅へ行き、その後、地区の人の車で避難した。「自宅が無事なのかもわからず、休めない」

 避難所での感染対策も重要だ。

 市総合福祉センターでは各所に消毒液を用意し、希望者には不織布マスクも配った。「密」を防ぐため、室内には仕切りを置くなどして他の避難者と1メートルほどの間隔をとれるようになっている。

 上野勝子さん(75)はマスクをつける間もなく自宅を飛び出した。避難所でマスクを受け取り、「対策がしっかりしていて、すごくありがたい」と話した。

 市はこの日、約10カ所に点在していた避難所を市内のホテル2カ所に集約。避難者は午後から、市が手配したバスなどで移動を始めた。斉藤栄市長は4日の市対策本部会議の終了後、「避難者は非常に疲労がある」と説明。避難所を医師や保健師が巡回する対応をホテルでも続けるという。