豪雨の夜、避難せず「後悔」 石碑に刻まれた妻子の名

大久保貴裕
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 西日本豪雨土砂災害で12人が犠牲になった広島県熊野町の住宅団地に4日、新たに石碑が建立された。除幕式が終わり、人がまばらになった会場で、石碑の裏に刻まれた文字をじっと見つめる男性の姿があった。

 「上西千恵美」「上西優太」「上西健太」

 視線の先にあるのは妻子3人の名だ。家族で1人生還した美智春(みちはる)さん(56)は「ずっとみんなで元気にいたかった……」。涙を浮かべ、声を絞り出すように語った。

 3年前のあの夜。住宅団地「大原ハイツ」にあった2階建ての上西さん宅は1階が押しつぶされた。美智春さんは未明に救助されたが、土砂に埋もれた右足を切断する大けが。妻子の顔をみることはできなかった。「あの時家族で早めに避難すればよかったのに、勇気がなかった。ずっと後悔している」。いまはともに生還したフレンチブルドッグの「ふくちゃん」の存在が前を向く支えだ。

 除幕式の前夜に目にしたのが、静岡県熱海市土砂災害を伝えるニュース映像だ。「3年前を思い出した。ひとごととは思えず、怖かった」。全国で毎年繰り返される被害に、美智春さんは「早めに避難場所を開設してほしい。(天候が)ひどくなってからでは逃げるところがない」と訴える。「3人も、もう二度と被害者が出ないことを願っているはずです」

 この日、建立された石碑には「未来へ繫ぐ 尊い命の大切さ」とある。町内の中学生400人の考えた案の中から、遺族の意向を踏まえて刻まれた。(大久保貴裕)