コーヒー飲みながらメガネ選び 時間かけ、予想外の効果

染田屋竜太
【動画】メガネ店とカフェが異色のコラボ=染田屋竜太撮影
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 コーヒーや軽食が並ぶカウンターテーブルの近くにはメガネがずらり。一角には視力測定器も置かれている。大阪府東大阪市俊徳町2丁目で、一風変わったカフェが話題になっている。地元のメガネレンズメーカーの敷地内で、切り盛りするのはメーカーの役員。異色の取り合わせが思わぬ化学反応を生んでいるという。

 「次の健診はいつ?」「1カ月後やね」

 平日の午後、ベビーカーに乗った子どもを連れた女性2人がコーヒーを飲みながら語らう。一見、どこにでもあるカフェのようだが、「レンズビーンズ」の店内の壁際には数十個のメガネが棚に並べられ、奥の個室では店主の西田博之さん(48)が機械を使ってメガネの加工中だ。

 カフェは、レンズメーカー「昭和光学」の本社オフィスや工場のすぐ裏にある。西田さんが常務を務める同社は1939年創業。軽量、薄型などの技術を詰め込んだレンズをつくり、人気が高まる安価なメガネと一線を画してきた。

 取引のほとんどがメガネ店などのため、客とふれあえる場所をつくろうと同社は当初、ショールームをつくる予定だった。

 だが、計画を全面的に任された西田さんは、会社の場所が大通りから奥まった場所にあるため、「ただメガネを並べるだけでは人に来てもらえない」と案じた。そこで思いついたのがカフェの併設だ。地域の人が気軽に立ち寄れて、茶飲み話の中でメガネの話もできる。「実は会社に内緒で」内装を一から考えた。

大々的な宣伝はせず

 昨年11月にオープン。「誰でも入りやすく」と外観や入り口はカフェを前面に出す。接客は妻の多賀子さんが担当だ。

 中に入るとすぐ手に取れるところにメガネを陳列。主に大阪のデザイナーが手がけたものを選び、「地産地消」も狙った。目の検査・測定用に専門の機器も置き、資格を持つ西田さんが扱う。

 西田さんは「利用者が納得するメガネづくり」にこだわる。安売りメガネ店では「即渡し」を売り文句に、スピード重視で検査やメガネ選びを進めるところも少なくない。「うちは、時間をかけてどんなメガネがほしいか、目にはどんなメガネがいいか話し合う時間を大事にしている」

 カフェの併設は「予想外の効果があった」と西田さん。カフェの客と話すと、「実は最近、メガネがあっていない」と打ち明けられた。相談にのると、きちんと測定し、メガネをつくることになった。「お客さんとゆっくり話せる場所だから、メガネに悩みを持っている人がいると気づけた」と話す。

 6月のある土曜日。店内で軽食を食べていた会社員女性(45)は、つくったメガネができるまで待機中。「通勤で店の前を通ってカフェでメガネつくれるんやと気になっていた」という。目が疲れやすいなと感じていた。時間をかけてレンズやフレームを選んだ。「気軽に入れるし、中でゆっくりできるのでいい」と話した。

 取引先のメガネ店に配慮して大々的な宣伝はしていない。個人事業主として西田さんが経営責任を負う。コロナ禍の影響もあり、カフェの収支はぎりぎりだ。それでも、「のんびりしながら目のことも考える。そんな地域の場にしたい」と西田さんは話す。(染田屋竜太)