「勝者なき選挙」「眠れない日続いた」都議選一夜明けて

東京都議選2021

軽部理人、山本孝興 武田啓亮
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 東京都議選の投開票から一夜明けた5日、激戦を勝ち抜いた候補者らはさっそく街頭に繰り出した。特定の党への風が吹かない中、「勝者なき」選挙となった都議選。投票率も前回から約9ポイント落ち、第1党を奪還した自民党、第2勢力となった地域政党「都民ファーストの会」の当選者ともに厳しい表情を見せた。

都民ファ、コロナ施策不満「一定の受け皿には」

 「第1党とはなりませんでしたが、小池知事が掲げた都政改革の精神を忘れずに、今後も小池知事を支えていきたい」

 都民ファ代表の荒木千陽氏は5日朝、中野駅前で1時間半にわたってマイクを握った。自身も再選を果たし、通行人から「おめでとう」と声をかけられると、グータッチを交わした。

 結党した小池百合子知事が「旋風」を巻き起こし、圧勝した4年前とは一変した今回の選挙戦。閣僚や党首クラスが続々と応援に入る国政政党とは違い、小池氏は最終盤まで動かなかった。候補者の日頃からの地元での活動量が試され、都民ファにとっては地力が問われた選挙戦となった。

 荒木氏は街頭演説で、新型コロナウイルスの水際対策やワクチン確保の失敗を批判し続けた。コロナの感染状況が悪化する中、主張が受けいられる手応えを得たという。「勝者はいない選挙戦だった。だけど政権与党に対する不満はすさまじく、その受け皿に都民ファが一定程度なることができたのかなとも思う」

 都民ファの当選者は31人で、告示前より14議席減らした。それでも党勢を象徴する1人区の7選挙区では3議席を都民ファが取り、自民党の2議席を上回った。劣勢が指摘された候補者も当選が相次いだ。

 2議席を5人で争った渋谷区で立候補した現職の龍円愛梨氏(44)もその一人だ。元民放のアナウンサーとして、前回選挙では2位に約1万票差をつけてトップ当選。今回は次点候補に771票差まで迫られながら、競り勝った。子育て世帯への支援や性的マイノリティーへの差別解消などを訴えた。4日夜、当選確実が報じられると、「前回と全然違う選挙だった。何が正解かわからない状況で、風はないものと思っていた」と振り返った。それでも当選を果たしたことについて、ダウン症の息子がいることに触れ、「私に託していただいたことは都議会にとってもよかった」と語った。軽部理人、山本孝興)

自民「有権者から厳しいお叱りも」

 自民党は33議席を獲得し、第1党を奪還したものの、民主党(当時)への政権交代直前にあった2009年都議選の38議席を下回る結果となった。告示前の25議席からは伸ばしたが、60人の候補者の半数近くが落選。最低ラインの目標としていた自民、公明両党で過半数に届かなかった。

 特に複数擁立した選挙区では、苦戦を強いられた候補者が相次いだ。

 町田市(定数4)で立候補した元Jリーガーの星大輔氏(40)は3番手で初当選。同じ選挙区に自民が擁立した女性新顔は落選した。星氏は「不安で眠れない日々が続いた」と振り返る。

 5日午前7時ごろ、星氏はさっそく町田市の鶴川駅前で街頭に立った。

 「おかげさまで当選を果たすことができました。ありがとうございました」

 「がんばって」と声をかけられると、グータッチで応えていた。1時間ほど、改札前を行き交う人に声をかけ続けた。

 「有権者から厳しいお叱りもいただいた。現職候補が落選した選挙区もある。この都民の声は真摯(しんし)に受け止めたい」。選挙戦を通じて、ワクチン接種の遅れやコロナ禍で東京オリンピック(五輪)・パラリンピック開催を目指す党の姿勢への反発を強く感じたという。

 都議として、元Jリーガーならではの視点も生かしたいと考えている。「子どもがのびのびと外で遊べる環境を整備したい」というのが市議時代から取り組んできた目標の一つだ。「体力にはまだまだ自信がある。街を歩いて都民の声を拾う、『足で稼ぐ議員』でありたい」と抱負を語った。(武田啓亮)