第16回バイデンが掲げたあの半導体 作った異色の工場を訪ねた

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米ミネソタ州ブルーミントン=青山直篤
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断層探訪 米国の足元 第四部①

 4月12日、ワシントンのホワイトハウスにある「ルーズベルトルーム」。米大統領ジョー・バイデンは、長机の上から直径20センチの円盤を取り上げると、玉虫色に輝く表面を掲げてみせた。半導体集積回路(IC)の基板、シリコンウェハーだ。

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4月12日、米ホワイトハウスでバーチャルの「半導体と供給網弾力化のためのCEOサミット」に参加し、半導体のシリコンウェハーを掲げるバイデン米大統領=AP。ウェハーは今回の取材で訪ねた米ミネソタ州の「スカイウォーター・テクノロジー」の製品だ

 オンライン会議でホワイトハウスとつながった米ミネソタ州ブルーミントンのオフィスで、トマス・ソンダーマン(58)はかたずをのんで見守った。バイデンが掲げたウェハーは、ソンダーマンが最高経営責任者(CEO)を務めるスカイウォーター・テクノロジーの製品だ。政権が主催した「半導体と供給網弾力化のためのバーチャルCEOサミット」は終盤に入っていた。

 「全従業員の名誉だ。米国が半導体の重要性を認めたのが誇らしかった」。5月下旬、スカイウォーター本社で取材に応じたソンダーマンはそう振り返った。

 ルーズベルトルームの大型モニターに映し出されたCEOサミットの企業側参加者は約20人。米半導体大手インテルのパット・ゲルシンガー、グーグルのスンダー・ピチャイ、半導体受託生産の世界最大手「台湾積体電路製造」(TSMC)会長の劉徳音ら、そうそうたる顔ぶれだ。半導体不足で減産を余儀なくされた米ゼネラル・モーターズ(GM)など米自動車大手「ビッグ3」のCEOもみな出席した。

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米スカイウォーター・テクノロジー最高経営責任者(CEO)、トマス・ソンダーマン=5月24日、米ミネソタ州ブルーミントン、青山直篤撮影

 そのなかで、スカイウォーターは異色の存在だった。CEOサミットのわずか9日後の4月21日、新規株式公開(IPO)で米ナスダック市場に上場したばかり。従業員約580人の小さな企業だ。直近の2021年1~3月期決算で売上高は4800万ドル(約53億円)、7月時点の時価総額も約10億ドルと、いずれも米半導体業界の巨人インテルと比べれば1%にも満たない規模だ。

 そのスカイウォーターが、なぜ世界的な大企業と肩を並べ、サミットに招かれたのか。その背景を解くカギになるのが、積極的な財政出動で「大きな政府」へ向かうバイデン政権下で、半導体分野の産業政策と官民連携の機運が復活していることだ。

 冷戦終結後、世界はグローバル化をひた走り、企業はサプライチェーンの効率化を前提として経済成長を追求してきた。膨大な富が生まれる一方、格差の拡大や地域社会の弱体化は、民主主義を弱めた。新型コロナウイルスがもたらした危機は、時代の転機を告げている。ただ、一国に閉じこもる保護主義も答えにはならない。激動する市場と、統制色を強める国家とが織りなす「コロナ後」の世界。動揺するサプライチェーンの「断層」で針路を探る人々を訪ね、各5回構成で報告する。

 「このウェハーこそ、『イン…

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連載断層探訪 米国の足元(全30回)

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