過酷業務で労災認定の元店長 親に漏らした言葉とは

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志村亮
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丸亀製麺の看板
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 大手うどんチェーン「丸亀製麺」の店長として働いてうつ病を発症し、昨年10月に労災認定された20代の男性と60代の父親が朝日新聞の取材に応じた。入社から3年たたずに郷里に戻らざるを得なくなった男性は、いまも症状に悩まされ、治療を続けているという。

「3年はがんばろう」

 男性は2017年春、九州の高校を卒業し、丸亀製麺を運営するトリドールホールディングス(HD)に正社員として入社した。トリドールHDが高卒の新卒採用も本格化させたころだ。

 男性によると高校で求人をみて「大企業だから安心だろう」と考えた。面接して内定をもらい、高校の先生は「石の上にも三年。来年も求人が来るよう後輩のためにもがんばって欲しい」と励ましてくれた。だから「3年はがんばろう」と決めていたという。

 男性は都内の複数の店舗で働いた。一般社員として他の店長の下で働いていたころは休憩があり、食事して余った時間にスマホでゲームをする余裕もあった。

 男性によると、19年2月に店長になると生活が変わった。社用の携帯電話を持たされ、休日に上司の電話に出なかったら怒られた。休日でもトラブル対応のため準備をしておくよう命じられた。出勤に備え、常にリュックに仕事着と長靴を詰めておくようにした。

 店長会議にも出席するようになった。会議の空き時間に、ある先輩がこっそり教えてくれたという。店長はまともに休めないことなどについてだった。

「俺はもうすぐ辞める」

 「俺はもうすぐ辞める。お前もからだを壊さないうちに次の仕事を探した方がいい」

 先輩はこう言い残し辞めていったという。

 実際、仕事は尽きなかった。天ぷらや麺の仕込み、食材の検品・発注、顧客の注文・クレームへの対応、シフトの作成・管理……。19年6月から働いた都内の大型商業施設のフードコート店では、営業時間中ほぼ客足が絶えず、狭い仕事場での立ち仕事が続いた。

 向島労働基準監督署東京都墨田区)に提出された男性のこのころの勤務記録を見てみよう。19年6月4日は以下のようになっている。

 出勤 午前6時54分

 休憩(1回目) 午後3時3分~午後6時35分

 休憩(2回目) 午後6時36分~午後9時49分

 退勤 午後9時54分

休憩6時間45分、残業15分

 記録が正しければ、出勤から退勤まで男性が拘束された時間は15時間。このうち労働時間は8時間、休憩は6時間45分、残業は15分だ。1回目、2回目の休憩がそれぞれ3時間以上ある。2回目の休憩後、すぐに仕事が終わっている。

 休憩が長いのはこの日だけでない。19年4~6月の勤務記録は、1カ月間の残業の合計が月44~54時間程度で、休憩は月52~68時間程度。残業よりも休憩が多い日がめだつ。

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丸亀製麺元店長の勤務記録の例

 男性によると、これらの勤務記録は事実と異なり、「トイレに行く時間以外はほぼ働いていた」という。仕事場を離れられず、食事も事務作業をしながらおにぎりをほおばって済ますことが多かった。事実と異なる勤務記録の申告は、上司に指示されたと主張する。

「上司が指示した事実ない」

 トリドールHD広報は取材に対し、男性の休憩時間が「不自然なほど長い」ことを認めたが、「上司が指示した事実はない」としている。男性への指導不足などから「男性が勤怠無打刻での労働を行うという判断に至ってしまう状況を作ってしまった」という。

 労災認定については「極めて重く受け止め、弊社における労働時間管理の体制が不十分であったことに対して、当該男性には大変申し訳なくおわび申し上げます」とコメントした。

 同社では普段から、残業の「上限時間を超えないようにシフト調整を行う必要性の指導」をしているという。人手不足だった男性の店舗への指導や対応が「不十分」だったために、「結果として当該男性が勤怠無打刻での労働を行うという判断に至ってしまう状況を作ってしまったものと認識している」という。男性が主張する事実と異なる勤務記録の報告の指示については「上司から指示した事実はなく、労基署の調査の中でもそのような指示があったという認定はない」とした。男性とは「現在、和解に向けた話し合いをしている」という。

 男性が主張するような事実と異なる勤務報告がほかにないかどうかについては、本件のように休憩時間が不自然なほどに長い勤怠や所定の労働時間にも大きく満たないような過小な勤怠記録があった場合、その従業員の上司に確認しているという。「不正があった場合は直ちに修正させるといった取り組みを行っている」としている。

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 男性の主張はこうだ。勤務記…

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