フランス産でもシャンパン名乗れず プーチン氏が法改正

中川仁樹
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 「シャンパン」の名称を使えるのは、ロシア産スパークリングワインに限る――。そんな法律が2日、ロシアで成立した。ロシアの有力紙ベドモスチなどが伝えた。

 本場フランス産シャンパンがロシアでは「スパークリングワイン」として売られる異常な事態となる。ロシア語のSNSでは早速、「プーチン(大統領)の勝利」「スコッチやバーボンも」などと揶揄(やゆ)する声が上がっている。

 ロシアではスパークリングワインは、誕生日などのお祝いの席では定番の酒。ロシア語で「シャンパンスコエ」と呼ばれて親しまれている。プーチン大統領が法律の改正案に署名し、ロシアでつくられたスパークリングワインだけが使用を認められることになった。

 ベドモスチによると、ロシアのスパークリングワイン市場のうち、外国産の割合は27%だという。

 フランスの制度や世界貿易機関(WTO)の協定では、「シャンパン」の名称はフランスのシャンパーニュで生まれたスパークリングワインしか使用できないよう守られている。こういった原産地の名称を保護する動きは世界的な流れにもなっているが、ロシアの今回の法律はそれに反するものだ。

 ロシアの意図ははっきりしないが、同盟国アルメニアが最近、欧州連合(EU)と結んだ協定で、アルメニア産の酒に「コニャック」の名称を使わないとした影響が考えられる。「コニャック」もフランスの地方の名称で、原産地の名称保護の対象だ。

 だが、米ブルームバーグ通信によると、高級シャンパンの「モエ・エ・シャンドン」を販売する仏モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)は「スパークリングワイン」にラベルを変更してロシアへの輸出を続けるという。ロシアの富裕層向けビジネスが無くなれば、経営への打撃が大きいためとみられる。

 これを受け、ロシア語のSNSでは「ロシアはプーチン(氏)だけでなく、シャンパンの故郷だ」「シャンパンだけでは不十分だ」「スコッチやバーボンも加えるべきだ」などのジョークも飛び交っている。(中川仁樹)

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    駒木明義
    (朝日新聞論説委員=ロシア、国際関係)
    2021年7月6日10時8分 投稿
    【視点】

    ロシア産のスパークリングワインを「シャンパンスコエ」と呼び続けたい、という気持ちは良くわかります。ソ連時代に生産が始まり、今も作り続けられている「ソビエト・シャンパン Советское шампанское」は、今も新年などのお祝いに欠か