「もう立派なベテラン」 谷川浩司九段の「藤井聡太論」

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聞き手・村瀬信也村上耕司
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 将棋の第92期棋聖戦五番勝負で渡辺明名人(37)=棋王・王将と合わせ三冠=を破り、史上最年少でタイトル初防衛、九段昇段を果たした将棋の藤井聡太二冠(18)=王位・棋聖。谷川浩司九段(59)が著書『藤井聡太論 将棋の未来』(講談社+α新書)で、トッププロならではの視点で藤井二冠の強さを分析している。「中学生棋士」「詰将棋が好き」という共通点のある谷川九段に、藤井二冠の「すごさ」を聞いた。

藤井聡太二冠の言葉に谷川浩司九段「参ったな…18歳でこの心境に到達されると」~谷川九段の「藤井聡太論」~

――『藤井聡太論』を書くきっかけは。

「本を手がけ始めたのは、去年の7月ごろ。ちょうど藤井さんが棋聖、王位のタイトルを取った時期だった。一番注目していたのは、『あと1勝でタイトル』という状況で勝ちが見えた時に、『本人の気持ちに揺れが生じるか、それが指し手に表れるか』というところ。昨年の棋聖戦第4局は、見事な指し回しを見せて優勢を築いた。最後、(1分未満で指さなければならない)1分将棋になって安全勝ちを目指すのかと思ったが、最短距離の勝ち方を見せた。タイトルがかかった一番ということを感じさせない勝ちっぷりだった。技術だけでなく、精神面でも大きな成長があったんだな感じた」

――タイトル獲得がかかる一番での戦いぶりに注目していた理由は。

「私は38年前に名人になった。最終局で勝ちが見えた時は気持ちを落ち着かせるのに苦労した。それでも、打った銀がゆがんだ。私の先輩も後輩も、ほとんどの棋士は初タイトルの時は平常心でいられなくなる。そこで勝ち急いだり、手が伸びなくなったりする。勝つにしても紆余(うよ)曲折の末、ということがほとんど。藤井さんの例は本当に珍しい」

――過去に藤井二冠の気持ちの揺れを感じたことは。

「デビューして1、2年の頃は、ミスをしてひざをたたくということもあったが、今はそういうことはない。他の棋士に比べたら、気持ちの揺れは少ない。あったとしても、すぐに気持ちを切り替えて現在の局面の最善手を追い求めていける」

「『将棋が好きだ』『強くなりたい』『真理を究めたい』ということが、本人にとっては全てに近いのだと感じる。相手というより、将棋と対峙(たいじ)している。記録とかタイトルよりも、『今日の対局で将棋の真理に少し近づけるか』ということを目指していると思う。そういうことを考えているから、初タイトル獲得の時も揺れが生じなかったのだと納得できる。彼にとっては、公式戦はタイトルがかかった対局も予選も全て同じ対局。研究会の対局も同じ。全てが同じ『将棋』」

うならされた藤井二冠のひと言をはじめ、対局での時間の使い方やAI(人工知能)の影響、そして今後について谷川九段が語ります。

――藤井二冠からは『楽をしたい』とか『将棋以外のことをして遊びたい』という気持ちが感じられない。

「将棋は奥が深いもの、という…

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