ライバルの横浜と東海大相模 名将の言葉を胸に頂点へ

黒田陸離
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 2年ぶりの夏の甲子園をかけた神奈川大会が10日、開幕した。春夏連覇をめざす東海大相模に対して、横浜は3年ぶりに代表校の座を奪おうとしている。互いにライバルと意識し合う両校。決戦に向けて仕上げに入っている。

 大会3週間前、横浜のグラウンド。マウンドとホームの間に白線が引かれ、投手陣がノックを受けていた。ボールが転がったエリアごとに動きを確認する。「そこからは間に合わないよ」「三塁狙うなら反対の足に体重を乗せないと」。全体に指示を出す安達大和主将(3年)を中心に周りから檄(げき)が飛ぶ。「だいぶコミュニケーションが密になってきた」と村田浩明監督(34)がうなずいた。

 春夏合わせて甲子園を5度制した横浜。夏は100回大会まで3年連続で甲子園に出場していたが、101回大会では東海大相模にその座を奪われた。2年ぶりの大会に向け「横浜高校再建」を掲げてきたが、克服すべき課題も多かった。

 「選手をどう動かして、選手たちがどう信じてやってくれるか」。村田監督は前監督の解任を受け、昨年4月に急きょ、母校に戻った。1年目は選手の特徴や人間性を知るので精いっぱい。昨夏の独自大会は準々決勝で6点差をひっくり返され敗退。昨秋の県大会では、準決勝で東海大相模にコールド負けを喫した。

 監督自身、17年前の夏に主将として甲子園に出場。渡辺元智(もとのり)・元監督(76)からは「愛情が人を動かす」と教えられた。恩師の言葉を胸に選手たちと向き合い、今春には「言いたいことは全部言えるようになった」。チームにも適度な緊張感が生まれている。

 今年のチームには甲子園で戦った選手がいない。経験不足もあるが、3年生には安達主将のほか、復活が待たれる最速148キロ左腕金井慎之介投手もいる。「コロナや環境の変化があったが、乗り越えてきた山はどこよりも大きい」と村田監督。初めて横浜を率いて神奈川大会に挑む。

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 迎え撃つ東海大相模。「影響力のある人間になれ」。選抜優勝の立役者石田隼都投手(3年)は昨秋、門馬敬治監督(51)からそう声を掛けられた。相手打者を抑えることだけが、エースの役割と考えていた。だが、真のエースは自らのプレーや態度がチームの意識を左右する、と教えられた。

 春の県大会や関東大会では登板の機会はほとんどなかったが、ベンチやブルペンで敵味方の配球を研究。「インコースのスライダーを使ってきたね」と、相手投手の変化も見逃さず、県大会優勝に貢献した。夏の大会が近づくにつれ、「影響力」の意味をさらにかみ締めている。

 門馬監督は健康上の理由で今夏をもって母校の監督を退任する。「もう大丈夫です!」。ケガから復帰した選手が練習に戻ろうとしても「いいんだ、もうちょっとゆっくり」と無理をさせない。厳しい指導で知られたが「ちょっと優しくなったんですよ」と笑う。

 コロナ禍で夏の甲子園がなくなった昨年。「最善の準備や寮生活の体調管理。見失っていた当たり前のことをコロナが教えてくれた」。今夏は自身にとって区切りとなる。県勢の春夏連覇は、松坂大輔投手を擁する横浜が1998年に達成したのみだ。だが、門馬監督は特別な感情は出さない。「今回は日本一があるので狙っていく。それがうちの日常」。監督として22年間、貫いてきた軸はぶれない。(黒田陸離)