第18回輪島塗にも似た職人芸 半導体作り支えた日米の信頼関係

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ミネソタ州ブルーミントン=青山直篤
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断層探訪 米国の足元 第四部③

 冷戦終結後、世界はグローバル化をひた走り、企業はサプライチェーンの効率化を前提として経済成長を追求してきた。膨大な富が生まれる一方、格差の拡大や地域社会の弱体化は、民主主義を弱めた。新型コロナウイルスがもたらした危機は、時代の転機を告げている。ただ、一国に閉じこもる保護主義も答えにはならない。激動する市場と、統制色を強める国家とが織りなす「コロナ後」の世界。動揺するサプライチェーンの「断層」で針路を探る人々を訪ね、各5回構成で報告する。

 米ミネソタ州のミネアポリス・セントポール国際空港近く。スカイウォーター・テクノロジーの半導体製造工場(ファブ)から車を数分、走らせると、もう一つのファブに着く。

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サンケン電気子会社、米ポーラー・セミコンダクターの半導体製造工場では、クリーンウェアを着た作業員とともに、ウェハーを運ぶオムロン製のロボットが動き回る=5月26日、米ミネソタ州ブルーミントン、青山直篤撮影

 二つの工場は同じ源流を持つが、グローバル化の荒波のなかで全く別の道を歩むことになった。「完全な米国資本のファブ」を強みとするスカイウォーターに対し、他方の工場は、日本企業の傘下に入ったのだ。

 工場を運営するのは「ポーラー・セミコンダクター」。2005年、電力制御用のパワー半導体大手、サンケン電気埼玉県新座市、東証1部)が買収した。国際空港とミシシッピ川のすぐそばにあり、半導体産業に欠かせない水と輸送手段が整った立地だ。

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 ポーラーの工場の入り口に入ると、まず出会ったのが日本の学校の昇降口のような、靴を上履きに履き替える場所だった。ファブの清浄な環境を保つため、全従業員がげた箱で靴を履き替えるが、米国の半導体工場では一般的ではない。

 建物のなかの生産区域内に入る際には、さらに全身を厳重にクリーンウェアやメガネ、帽子でおおう。上履きのスニーカーをさらにカバーでおおう際の手順まで細かく決められている。

 コロナ下で深刻化した世界的な半導体不足に対応するため、フル生産が続いていた。技術開発担当の副社長、ラジェシュ・アパト(43)は「半導体は一晩で生産を増やすなんてことは難しい。1月の75%くらいの稼働率から坂を上るように上げてきて、5月のいまは90~95%。ほぼエンジン全開の状態だ」と話す。

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ポーラー・セミコンダクターの技術開発担当副社長、ラジェシュ・アパト=5月26日、米ミネソタ州ブルーミントン、青山直篤撮影

 白を基調とした工場内で、これまた白一色の従業員が行き交う姿は、まるで宇宙船の中のようだ。整然とした工場内では、ウェハーを運ぶオムロン産業用ロボットが動き回り、人間と「協力」し合いながら効率的に作業を進めている。

 コロナ禍は、世界中の供給網…

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連載断層探訪 米国の足元(全30回)

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