「ケアに投資を」 ジェンダー指数担当が語るコロナ後

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藤崎麻里
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 世界経済フォーラム(WEF)が6月、コロナ禍で打撃を被った雇用の問題をどう解決していくかをテーマとしたオンライン会合を開きました。この統括責任者だったサーディア・ザヒディ氏がこのほど、朝日新聞の単独インタビューに応じました。同氏は、日本が毎年120位前後と先進国で最低レベルにとどまっている「ジェンダーギャップ(男女格差)指数」の調査担当者でもあります。コロナ後の仕事、そしてジェンダー格差の現状などについて語ってもらいました。

「危機対応から長期投資へ」

 ――コロナ後の仕事のありかたについて、人的投資が必要だと訴えていますね。

 「各国政府はコロナ危機の直後、支援に注力する適切な対応をとりました。ただすでに発表された財政刺激策の大きさを考えると、重要なのは、これらを短期間の対策にとどめず、私たちが求めているような長期的な経済システムづくりにつなげていくことです。つまり、明日の市場セクターへの投資です」

 「たとえば、教育については、子ども、大学生ら、大人にも活用できる新しい教育の手法、テクノロジー、ツールなどがあります。でもいま経済構造が大きく変わるなかで必要とされる労働者の再訓練には十分に活用されていません。たとえば政府がオンライン学習の証明書をつくり(教育テクノロジーが再訓練や就業にいかされるような)支援が考えられるでしょう。そのように政府による追加的な支援があれば、いまあるテクノロジーが補完され、市場づくりにつなげられます」

 「脱炭素への取り組み、自然エネルギーへの転換も、追加的な支援が必要です。これも将来の成長が見込めるところです」

「多様性のなさが悪化」

 ――多様性の重要性も強調しています。

 「いま世界では多様性のなさが悪化している状況がみられます。コロナ禍では、雇用面、家庭面でも、女性が置かれる立場が男性より悪い状況が浮かび上がりました。異なる民族間、収入面の不平等も同じです。低い技術力、低い賃金の人の方が、高い技術力、高い賃金の人よりも影響を受けました。賃金、技術力、ジェンダー、さまざまな民族的な背景、いずれの面でも分岐が生まれ、格差が広がりました。もともと社会にあった不平等が悪化したのです」

 「コロナ後を見据え、社会構造に『平等さ』を組み込み、格差を是正していく必要があります。5~10年後、私たちは再び繁栄できているかもしれません。でも不平等が残ってしまっていたら……。私たちは、将来から振り返ったとき、現在が多くの人にとっての不平等を改善する起点になったといえるよう、『ビルドバックベター』(より良く復興する)だけでなく、『ビルドバックブローダー』(より広く巻き込んで復興する)が必要だと呼びかけています。女性、さまざまな民族的背景をもつ人たち、LGBT、障害がある人たち、技術力や収入が低い人たちであっても、みんなが中流の暮らしを送れるようにしていかなければなりません」

「日本の女性、教育水準高いのに」

 ――日本でもコロナ下で女性により厳しい影響が出ました。

 「多くの経済発展した地域で…

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2021年7月7日16時58分 投稿
    【解説】

    コロナウイルスによるパンデミックは、「シーセッション(女性不況)」とも言われるように、日本も含め世界各地で多くの女性が職を失い経済苦境に立たされています。また、在宅勤務が進む結果、育児介護にかかる時間が増加し、仕事を辞めざるを得なくなったと

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    志村亮
    (朝日新聞経済部次長=企業、労働)
    2021年7月7日11時13分 投稿
    【視点】

    デスクとして出稿に関わりました。日本が毎年、居心地の悪い思いをするジェンダーギャップ指数の調査担当者。びしっと処方箋を示唆してくれるか期待しましたが、藤崎記者が触れているように時間の制約がありました。ただし短い時間のなかでも、ザヒディ氏がし

    …続きを読む