「裏千家初級」球児、三足のわらじ履く 心得は一期一会

安藤仙一朗
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 野球と茶道。

 異色の文武両道に挑戦する球児がいる。

 東大津(滋賀)の新開(しんかい)達基君(3年)。限られた練習時間を無駄にせず技術を磨き、今はレギュラーで二塁手を張る。部員42人の副主将も務め、最後の夏に臨む。

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 先に始めたのは茶道だった。今年で13年目。幼稚園の年長のとき、高校で茶道部だった母の影響で、近所の教室に通うことになった。

 小中学校でも続け、裏千家の「初級」の資格を取得。現在は「中級」の稽古に励んでいる。茶道部では、同学年で唯一の経験者。ほかの部員に作法を手ほどきすることもある。

 「礼儀や目上の人との接し方を学べる」との理由で続けている。

 一方、野球は10年目だ。父とよくキャッチボールで遊んでいたこともあり、小学3年で始めた。中学では軟式野球部に入り、主将も任された。

 最初は、高校で野球をするつもりはなかった。勉強も忙しく、兼部は難しいと思った。しかし、同じ中学出身の野球部員から誘われ、気持ちが揺れた。

 津田和紀監督(56)は指導歴が29年目だが、兼部の部員は初めてだった。それでも、「本人が両立できるなら、こちらが止める理由はない」と抵抗はなかった。

 選手の自主性を重んじるのが指導方針だ。「ゆるい部活はだめだが、昔の価値観を押しつけず、選手に判断力を高めてほしい」。そんな思いで、髪形も丸刈りは強制していない。

 新開君は先輩後輩の仲が良い雰囲気も見て、この野球部ならと入部を決めた。

 毎週火曜日は茶道部を優先し、野球部には参加しない。その分、集中して練習し、1年秋からベンチ入りを果たした。昨夏始動した新チームでは、副主将にも立候補した。責任ある立場を務めることで視野が広がると思ったからだ。

 津田監督は当初、兼部での副主将は荷が重く、他の部員から不満が出るのではと心配した。だがむしろ、副主将に推す声が多くあがった。

 新開君が大切にしている心構えがある。「一期一会」。もともとは茶会の心得を説いた言葉だが、野球にも通ずると考えている。

 打撃練習でも、ノックでも、一球一球がまさに生涯に一度きりの機会。無駄にしないよう食らいつくことで、力を付けてきた。

 この夏で、野球は一区切りにする。看護師になる夢がある。昨年、祖母が入院したとき担当だった男性看護師にあこがれた。

 両親ら支えてくれた人に、ユニホーム姿を見てもらう最後の大会だ。「恩返しができるよう、すべてに全力でプレーしたい」

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 次回は8日に掲載します。(安藤仙一朗)