熱海のラーメン店、被災者ら無料に 心意気に客は寄付

中村純
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 静岡県熱海市ラーメン店「麺匠 うえ田」が土石流が起きた翌日の4日から、被災者や市民、災害支援で熱海を訪れている人たちに、ラーメンやご飯類を無料で提供している。

 つけ麺やギョーザも含め、アルコール類を除くほとんどのメニューが対象。店主の郷家光広さん(47)は「ぜひ温かいラーメンを食べに来てください。遠慮はいりません」と来店を呼びかける。

 宮城県出身。東日本大震災では被害を受けたが、行方不明者への懸命な捜索やボランティアによる献身的な活動を目の当たりにした。当時の感謝の気持ちを忘れまいと、ラーメンチェーン経営の傍ら、災害に見舞われた全国の被災地にこれまで義援金や物資を届けてきた。

 今回の土石流では、多くの人が住む家を流され、不自由な避難者生活を強いられている。つらい思いをしている地元の人たちのために何かできないか。思い立ったのが一番得意なラーメンづくりだった。無料サービスは7月末ごろまで続けるという。

 店を訪れた客は、店内に貼り出された「無料」に最初は戸惑いながらも、食べ終わると大半の人が「募金箱」と書かれたペットボトルに、注文した品とほぼ同額の寄付をしていくという。千円札をボトルに入れた30代の男性客は「店主の心意気に打たれました。ラーメンもうまかった」。1万円札を置いていく客もいたそうだ。

 全国有数の温泉地だが、コロナ禍で観光客数は大きく落ち込む中、未曽有の災害に見舞われた。熱海の人々の気持ちは天気と同様に晴れる兆しは見られないが、それでも港町の人情はまだまだ健在のようだ。(中村純)