雇用の回復、地域で明暗 緊急事態宣言が影響か

野口陽、山本恭介
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 雇用の指標として厚生労働省が毎月発表する「有効求人倍率」をめぐり、新型コロナ対策の緊急事態宣言が繰り返される地域とそれ以外の地域で、回復具合に差が出始めている。営業自粛要請などが地域経済の足かせになっていることをデータが裏付けている形だ。

 求人倍率は、求職者1人に対し、求人が何件あるかを示す。有効求人倍率(季節調整値)の全国平均は2019年12月には1・57倍あった。これが20年4~5月に全国が対象になった1回目の緊急事態宣言を経て、同10月には1・04倍まで低下。都道府県別の倍率も軒並み下がり、20年中はほぼ横ばいで推移した。

 21年の都道府県別の有効求人倍率(就業地別)は、動きが2極化している。

 1月以降、宣言や「まん延防止等重点措置」が断続的に出ている東京都大阪府。5月を昨年10月と比べると、東京は0・05ポイント、大阪は0・03ポイントそれぞれ悪化し、まだ底が見えない。同様に宣言や重点措置の対象になった愛知、福岡、沖縄などの地域も回復は0・1ポイント未満と小幅だ。

 一方、今年に入ってからは宣言の対象になっていない地域では、数値が大きく回復したところがある。例えば、福井県は昨年10月から0・25ポイント、秋田県は0・28ポイント改善し、コロナ禍前の水準を取り戻す勢いだ。

 5月の倍率が1・81倍で全国トップだった福井県は今年、警戒を呼びかける県独自の「緊急事態宣言」を2回出したが、飲食店に酒類の提供自粛などは求めていない。県によると、県内の製造業も求人意欲を取り戻しているという。

 企業の採用意欲を表す新規求人数に宣言や重点措置が与える影響を厚労省も注視している。田中誠二職業安定局長は6月29日の記者会見で、「コロナ感染が経済活動に与えている影響を通じ、労働需要にも影響を与えている可能性が考えられる」と語った。

 厚労省は、休業手当を払って雇用を維持した企業を支援する雇用調整助成金の拡充などを続けてきた。だがコロナ禍が長引くにつれ、財源不足を心配する声も上がり始めている。

 第一生命経済研究所の新家義貴・主席エコノミストは都道府県による差が出ている状況について「緊急事態宣言などが地域の雇用に影響を与えているのは明らかだ」と指摘する。コロナ禍が長引く地域ほど苦しい事業所が増えているとして、「ワクチン接種を進め、感染の早期収束をすることが必要だ」と訴える。(野口陽、山本恭介)

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    志村亮
    (朝日新聞経済部次長=企業、労働)
    2021年7月7日13時2分 投稿

    【視点】有効求人倍率も、完全失業率も、全国値でみると今年に入ってからほぼ横ばい。でも、産業別、地域別、男女別など、細かく見てみると違う風景が浮かんでくる。コロナ禍からの回復は「V字」でなく「K字」といわれます。統計を丁寧に見なければならなくなってい