東電・清水元社長9年ぶり公の場に 原発事故の責任否定

村上友里、編集委員・佐々木英輔
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 東京電力福島第一原発事故をめぐり、東電の株主が旧経営陣5人に22兆円の支払いを求めた訴訟で、事故当時の社長だった清水正孝氏ら4被告の尋問が6日、東京地裁であった。清水元社長らは、事故前には大津波の危険性を認識していなかったと口をそろえ、事故の責任を改めて否定した。

 清水元社長が公の場で事故について語るのは、事故翌年の2012年にあった国会事故調査委員会で聴取を受けて以来、9年ぶり。

「記憶にない」「知らない」を繰り返す

 福島第一原発の事故前の津波対策をめぐっては、会長から担当者までが一堂に会する「御前会議」の場で、08年2月には津波想定の引き上げを記した資料が配られ、09年2月には「14メートル級の津波」への言及があったことが判明している。

 尋問を受けた清水元社長はこうした場面について、「記憶にない」「知らない」などと発言した。御前会議の位置づけ自体が「会社の意思決定の場ではない」とも強調し、「議題が多く配布資料も大量にある。全ての資料を読み込み、理解する前提ではなかった」と説明した。

 さらに、原発の安全性についての判断は担当部門の部長に委ねていたと主張。「原発に限らず、沿岸部の火力発電所も含めて津波の危険性を耳にしたことはなかった」と述べた。

 尋問の最後、清水元社長は「設備の安全性を最優先に取り組んできたが、結果として事故を防げなかった。多くの皆さんに甚大な被害をもたらし、改めておわび申し上げる」と謝罪した。一方、「取締役としての注意義務は果たしてきた」と経営陣としての責任を否定した。

裁判官、福島第一原発の敷地内を視察へ

 この日は、検察審査会の議決を受けて業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の尋問もあった。3人は19年に無罪判決を受けた東京地裁での公判供述に沿って、「14メートルの根拠ははっきりしていなかった」などと述べた。刑事裁判控訴審は11月2日に始まる。

 原告の一人で福島県に住む武藤類子さん(67)は傍聴後、「原発の安全性に関心も知識もないまま経営幹部を務めていたことに驚いた。報告を受けていないと否定を繰り返す姿に心底がっかりした」と話した。

 株主代表訴訟を担当する裁判官らは、10月に福島第一原発の敷地内を視察する予定だ。原告側弁護士によると、裁判長は「実際に現地を見て事故の責任を判断したい」と話したという。(村上友里、編集委員・佐々木英輔