怖くて呼べなかった家族の名 大丈夫だろう、今も悔やむ

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太田原奈都乃
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 300人以上(災害関連死を含む)が犠牲となった2018年の西日本豪雨から3年。山口県内では3人が命を落とした。あの時、「大丈夫だろう」と思わなければ――。自宅の裏山が崩れ、母親を亡くした周南市の男性はいまも悔やみ、早期の避難を呼びかけている。

 2018年7月7日午前0時過ぎ、周南市樋口の山あいにある小成川(こなるかわ)集落。雨がやむ気配はなかった。河村孝司さん(47)は、起きてきた母の典子さん(当時64)と窓の外を見た。「大丈夫かな」。経験したことのない激しい勢いで雨水が道路を流れ下っていた。

 テレビで豪雨災害のニュースは見たことがあった。だが、これまでに自分の家の裏山が崩れたことはない。災害が自分の身に起きると考えたことはなかった。外は真っ暗。体が不自由な父・孝則さんを連れ、この時間から避難することは難しいとも感じていた。「大丈夫だろう」。2人は再び眠りについた。

 午前2時ごろ、裏山が崩れ、土石流にのみ込まれた。天井が落ち、1階で寝ていた河村さんはわずかな隙間に四つんばいになった。外にはい出て屋根に上ると、家が潰れ、バラバラに砕け、流されているのがわかった。頭をよぎったのは「助かった」という安堵(あんど)ではなかった。「『助かってしまった』と思ったんです」。家には両親と弟がいたが、返事がないのが怖くて名前は呼べなかった。

 弟は自力で外へ出て無事だっ…

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