勢いもたらすコロナ下のチームワーク

黒田陸離
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 コロナ禍で部活動もままならない日々が続く。制約が多い環境下でも、球児たちはチームワークを磨きながら、激戦を勝ち抜こうとしている。

 「この場所は私が清掃いたしました 何かありましたらお知らせください」

 トイレの手洗い場に置かれたカード。掃除担当者の名前が手書きで記され、その脇には「高飛(こうひ)ホテルズ」とプリントされている。

 星槎国際湘南の選手たちが生活する高飛寮(神奈川県中井町)だ。空き部屋を合宿に訪れた他のチームが利用できるように、と考え始めたのは一昨年の秋だった。その後、新型コロナウイルスの感染が拡大し、利用実績は1件もない。

 県内の野球部では珍しい全寮制だ。昨年以降、多くの学校が休校に伴い、寮生活も取りやめた。しかし、星槎国際湘南の選手たちは「帰省もリスクにつながる」と寮で暮らし続けた。責任者である「総支配人」の香川琉星副主将(3年)と、実務責任者である「マネジャー」の中平颯馬主将(3年)を中心に「ホテルのような快適な寮をつくろう」と取り組んでいる。

 高飛ホテルズには九つの課があり、各部員がそこに所属する。スポーツクラブ課は毎日の検温など部員の体調管理を担う。レストラン課では食堂にアクリル板を設置したり、消毒液を補充したりと、感染防止に目を光らせる。

 練習同様、寮の運営にも真剣だ。忘れ物の放置など各課でミスが続いた時、香川副主将は総支配人の「業務」や野球に集中するため、実家に断って1カ月間、携帯電話を「自粛」した。そのことでより一層、仲間のことに目を配れるようになってきた。

 昨夏の独自大会では4強入りし、今年もそのメンバーが多く残る。「神奈川で最も一つになったチームを見せつけたい」と中平主将。巣ごもり生活で築いたチームワークで、初めての頂点へと突き進む。

     ◇

 「このまま行けば夏はいけるんじゃないか」。鎌倉学園の宮尾一冴主将(3年)は手応えを感じていた。昨秋の県大会では強豪校を次々と破り準優勝を果たした。続く関東大会でも、8強入りした。

 しかし、年明けに緊急事態宣言が発令され、野球部の活動は2月中旬まで休止された。宮尾主将やエース平本龍太郎投手(3年)のけがもあり、春の県大会では3回戦で敗れて夏のシードを逃した。感染拡大を防ぐため、大会直後から5月にかけて、再び活動休止に見舞われた。

 「どうしたらいいんだろう」。チーム全体に焦りが広がっていた。そんな空気を変えようと、三塁コーチを務める二宮康輝副主将(3年)が動いた。

 チームでは元々、家でできるストレッチや練習方法を動画で撮影し、新入生に向けて共有していた。二宮副主将は一発芸を織り交ぜながら動画を撮影。ほかの部員も続いた。「おいおい」。宮尾主将は苦笑しながらもオンライン越しの仲間の姿に救われた。「秋は秋。ノーシードで気負うことなく戦っていける」と宮尾主将。創部100周年の今年、初の甲子園をめざす。(黒田陸離)