史上最長タイ、14回連続全国めざす 不動心の聖光学院

福地慶太郎
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 7日に開幕した第103回全国高校野球選手権福島大会。聖光学院(同県伊達市)が史上最長タイとなる14回連続の全国大会出場に挑む。東日本大震災の年には甲子園で1勝し、被災者を元気づけた。チームの特徴は負けないしぶとさ。その裏には脈々と受け継がれるスローガンがある。

 県北部の田園地帯の一角にある球場で、聖光学院の選手たちが汗を流していた。練習着の背中には、黄色い糸で刺繡(ししゅう)された「不動心」の文字。グラウンド脇の倉庫の扉やバックネットの看板にも同じ3文字を掲げている。斎藤智也監督(58)が就任当初から選手に伝える言葉だ。試合でどんなことが起きても動じず、目の前のプレーに集中する――。そんな思いが込められているという。

 斎藤監督が1999年に就任するまで、聖光学院は甲子園の出場経験はなかった。福島大会は4強どまりで、強豪校との実力差は大きかった。そこで、斎藤監督は福島でナンバーワンの精神的に研ぎ澄まされたチームをつくろうと、哲学書から引用したという。「不都合なことを受け止める力を養えば、動じない心が生まれると書いていた。俺のイメージと本のくだりがぴたっとかみ合った」と振り返る。

 重視されたのが、あらゆる場面を想定した実戦練習とミーティングだ。ノックでは走者をわざと転ばせて野手の対応力を試したり、選手たちにはピンチになった際の気持ちの切り替えを考えさせたりした。斎藤監督の就任前からチームを見る横山博英部長(51)は「悪い展開になっても選手たちが動揺することが減った」と話す。

 チームは斎藤監督が就任した2年後の2001年に夏の甲子園に初出場したのを皮切りに、07年からは13年連続で出場。東日本大震災の11年には延長戦をサヨナラで制して勝利した。今年の福島大会で優勝すれば、第1~14回大会に連続出場した和歌山中(現・桐蔭)の記録に並ぶ。

 チームの特徴はプレッシャーがかかる終盤での勝負強さだ。13連覇した福島大会の決勝を振り返ると、1点差での勝利が半数超の7試合で、うち4試合はサヨナラ勝ちだった。

 大会前、野手のレギュラー陣は3~4点差で負けた終盤の劣勢を想定し、エースらを相手に紅白戦を繰り返す。逆境の中、自分を見失わず、どうすれば場面を好転できるかを考える。

 14年夏の決勝は、九回2死から4点差を追い付き、延長でサヨナラ勝ちした。九回に同点タイムリーを打った伊三木(いさぎ)駿さん(25)は「自分が打って試合を決めようと思わず、四球でもいいから、とにかく後ろにつないで負けないようにする方が結果が出ると気付いた。あの練習が無ければ負けていた」と語る。

 斎藤監督の次男・英哉さん(28)は三塁手として、10年夏の甲子園に出場。履正社(大阪)との3回戦で、八回裏に決勝点を挙げる本塁打を放った。飛び上がるほどうれしかったが、ベースを回ってベンチに戻ってからは「浮かれた気持ちで守ったら、エラーする」と不動心を意識した。

 続く履正社の攻撃は先頭の3番山田哲人選手(現・ヤクルト)から始まったが、無失策で三者凡退に抑え、5―2で逃げ切った。

 今年のチームは春の県大会で3年ぶりに優勝し、夏の福島大会でも優勝候補の一つに挙げられる。斎藤監督も「春以降は歴代の中でも一番良いぐらいに結果が出ている」と手応えを感じる。だからこそ、不動心が大切になるとみる。

 主将の坂本寅泰(ともやす)さん(3年)は14連覇について、「正直、意識はしている。先輩たちが積み上げたもののプレッシャーは大きい」。一方で「ただ、試合になれば先のことは考えず、目の前のプレーを全力でやりたい。先輩たちの連覇はその積み重ねの結果だと思う」と話す。選手たちは不動心を胸に、10日の福島大会の初戦に挑む。福地慶太郎