「陵墓」は文化財か 世界遺産登録が投じた課題を一冊に

編集委員・中村俊介
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 『文化財としての「陵墓」と世界遺産』(新泉社)が刊行された。歴史・考古学の学術団体による「陵墓限定公開」40周年記念シンポジウム実行委員会の編集で、一昨年暮れの大阪歴史博物館でのシンポジウムを一冊にまとめた。

 大阪府の「百舌鳥(もず)・古市古墳群」が世界文化遺産に登録されて2年。その認知度は国内外で高まったが、様々な課題はいまも消えていない。学術的な最新研究から保存活用や公開のあり方まで、専門家たちが論点を多角的にあぶり出す。なかでも構成資産の中核である「陵墓」ははるか昔の存在でありながら近代遺産の性格を抱え、問題は複雑だ。

 「文化財」的な側面と、立ち入り規制に代表される「陵墓」としての側面の両立は可能なのか。その特殊性は人類共通の財産である世界遺産と、はたして整合するのか。学術的に証明されていない被葬者を冠する推薦書記載の名称への危惧など、「百舌鳥・古市」をめぐる多様な議論もまた、陵墓公開を求めてきた学界の長く地道な活動の延長上にあることを実感させる。

 巻末には資料として、学界が宮内庁文化庁に提出した要望書や陵墓限定公開の経緯なども収録。2500円(税別)。(編集委員・中村俊介