国道135号、泥との格闘 熱海土石流、救助の現場は

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寺沢知海、増山祐史
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 静岡県熱海市を襲った土石流は、川を下り海にまで達した。海岸線に近い国道は寸断され、住宅や商店に土砂が流れ込んだ。この地区で安否不明者の捜索にあたった警視庁の救助隊の活動に記者が同行した。

 被害を受けた同市伊豆山の海側に位置する浜地区。JR熱海駅から1キロ足らずで、斜面に沿った住宅に140世帯ほどが暮らす。

 土石流発生の翌4日朝。集落の中心を縫うように貫く国道135号を、逢初(あいぞめ)川上流から流れ込んできた泥や家屋が幅120メートルほどにわたって覆っていた。

 泥は最大で1・5メートルほどの高さまで積み上がり、寸断された向こう側の様子も見えないほどだ。通りかかって巻き込まれたバスは押し上げられて埋まり、両隣の建物の1階を泥がふさいでいた。クリーニング店には腰ほどの高さまで泥の痕が残る。「出荷」というラベルが貼られたバッグや、仕立て済みのシャツを入れた袋を泥が覆っていた。

 一帯は商店街として栄えていた。地区で生まれ育った中田修裕さん(60)は「小さい頃は八百屋や魚屋が並んでにぎわっていた。企業の保養所も近いから観光客も多くて」と懐かしむ。平成に入って店は減ったが、自然に恵まれた住みやすい住宅街だった。

 中田さん宅1階のシャッターは内側にたわんでいた。はす向かいにあるタクシー会社の建物のガラスは突き破られ、1階は土砂で埋まっている。中田さんは「見る影もなくなったね……」。

 警視庁の救助隊は、この日から約170人態勢で地区の捜索を担った。

 「誰かいますか」。隊員は建物の中に声をかけながら、少しずつ慎重に泥をかき分けていく。土砂の中には生存者がいる可能性を考え、棒を刺して確認し、スコップで少しずつ泥をかき出していった。救助が必要な人はいないと確認できると、重機で泥を掘り起こしていく。建物の破片や泥をトラックに積む作業車や、積載物を運び出すトラックが行き交う音が響く。

 捜索現場を少し離れると、日常の風景があった。

 800メートルほど熱海駅寄りに移ると、観光客とみられる若者グループがコンビニの袋を手に歩いていた。駅前商店街は通常通り営業しているが、周辺を緊急車両や工事車両が行き来する。

 この日、断続的に降り続く雨の影響で泥はぬかるみ、隊員はひざ下まで泥につかることもあった。捜索中、土砂災害の危険を知らせるエリアメールが鳴り響くと、「撤退!」の号令で作業は中断。緊迫した空気の中、この日は高齢夫婦や乳児と母親ら5人が、翌日は80代の男女など3人が救助された。ビルに取り残された猫1匹も隊員が救い出した。

 6日朝に現場に赴くと、行く手をふさいでいた泥の山がなくなっていた。行き来がしやすいようにと地元の建設業者が24時間態勢で撤去したのだという。

 視界が開けた先にかかる逢初橋には、崩れた白い建物の建材が寄りかかるように積まれていた。建物は橋のそばにあった2階建てアパートだという。オーナーの男性は、住人3人のうち1人の行方が分かっていないと教えてくれた。

「もう住めないかもしれない」

 4日に救助された高齢女性の…

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