処理水放出の方針撤回求める意見書案、福島県議会が否決

笠井哲也、力丸祥子、関根慎一
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 政府による東京電力福島第一原発事故の処理水海洋放出方針をめぐり、福島県議会は7日、共産党提出の方針撤回を求める意見書案を反対多数で否決した。過半数を占める自民党が反対し、立憲民主党中心の会派「県民連合」と共産が賛成。近くある衆院選の前哨戦の様相を呈したが、県民連合から造反が3人出て、野党共闘に課題を残した。

 「起立少数。よって議員提出議案は否決されました」

 共産党の意見書案は政府方針を「スケジュールありきの一方的なもの」などと批判し、海洋放出方針の撤回と地上保管の継続を求めていた。政府方針を真っ向から否定する内容で、自民党からは反対の理由として「政府が決めたことで、もう撤回はできない」(ベテラン県議)との声が出る。ただ自民は「丁寧な説明」や「実態に即した賠償」を国に求める意見書案を出し、可決に持ち込んだ。海洋放出に慎重な県民世論に一定の配慮をした形だ。

 揺れたのは、県政では自民党とともに内堀雅雄知事を支える県民連合だった。

 会派が賛成の方針を決めたのは、本会議採決の2日前の今月5日。自民党の反対方針が伝わると、会派では「処理水は必ず衆院選の争点になる。自民党が反対する以上、態度表明しないと県民に分かりづらい」(幹部)との認識に傾いたという。知事が政府方針への賛否を明確にしない中、この問題では異なる判断を示したことにもなる。

 方針を決めた前日の都議選では、立憲民主と共産が候補をすみ分ける共闘効果もあり、両党とも議席を伸ばした。別の幹部は「衆院選での野党共闘を意識した判断」と明かす。知事と距離を置く共産は「知事与党」の歩み寄りに「野党共闘に弾みがつく」(町田和史・党県委員長)と歓迎ムードだ。

 ただ、県民連合は原発推進派の民間労組出身議員を抱え、原発に関する問題では元々意見の隔たりがあり、3人の造反を招いた。意見書案採決の直前にいずれも電力会社の労組から支援を受ける佐久間俊男、渡部優生、橋本徹の3県議が会派方針に反して退席した。

 渡部氏は取材に「電力の労働組合から支援を受けている」。橋本氏は「電力総連に相談し方向性も伝えた。労組には共産へのアレルギーも残っている」、佐久間氏は「幅広く国民に丁寧に説明することがこれからの課題」と述べた。(笠井哲也、力丸祥子、関根慎一)