育鵬社歴史教科書の採択めぐりミス指摘と監査請求 岩国

川本裕司
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 公立の小中で使う教科書について、昨年8月に岩国採択地区(山口県岩国市和木町)協議会が中学校歴史教科書に育鵬社版を継続して選んだ経緯をめぐり、岩国市で異議申し立てが続いている。協議会での話し合いで、委員が「編集方針がちがう教科書になるのは、(子どもたちに)多少混乱があるのではないか」と事実誤認の発言をしたあと、育鵬社版に決まっていた。市民団体が監査請求を申し立て、6日には市教委への事情聴取があった。

 2~3年にかけ学ぶことが多い歴史の教科書採択が在学中に変わっても、生徒は3年まで同じ教科書を使うため混乱はない。だが委員の発言に「間違いだ」との指摘はなく、事務局の市教委職員からも修正はなかった。

 協議会の議事録によると、教育委員や中学校長、保護者代表ら委員12人の最初の投票では、「新しい歴史教科書をつくる会」の流れをくみ2011年から採択されている育鵬社6票、東京書籍6票。委員発言後の投票で育鵬社8票、東京書籍4票となり、今年度からも継続して使用することが決まった。

 市議会6月定例会では「市教委事務局のミス」とする質問に対し、守山敏晴教育長は「事務局が見過ごしてしまった。ただ、発言で意見が変わったかと委員に聞いたら『それはない』だった。採択自体を変える必要はない」と答えた。

 情報公開請求で協議会の議事録を確認してきた市民団体「岩国の教育を考える会」は15年の採択で、ある委員が「吉田松陰は東京書籍では索引にも載っていない」と事実と異なる発言があったと指摘。市教委は今年3月に議事録の追記で訂正した。

 度重なる誤認発言と市教委の対応に納得できないとして、考える会の共同代表3人は6月、「事実誤認発言で有利になるよう誘導し選定された育鵬社の教科書、指導書の購入は違法かつ不当」として、約63万円を市に戻し入れるよう市教委に求める住民監査請求を起こした。7月1日に請求人の陳述、6日には市教委への聴取があった。守山教育長は「手続きに従った選定で問題はない」と話す。

 考える会の西原孝夫共同代表は「県内の自治体では『静ひつな審議環境』での教科書採択を求める県教委の方針に基づき、傍聴が許されていない。公開されていれば誤認発言もすぐにわかっていた」と批判する。

 昨夏の中学歴史教科書の採択では、防府市が育鵬社から東京書籍に変える一方、下関市が帝国書院から育鵬社に切り替え、県立中学は育鵬社の継続を決めた。文科省によると、育鵬社の中学歴史の全国占有率(冊数)は1・1%と、15年の6・3%から大幅に減った。(川本裕司)