デジタル化加速する社会 揺らぐ自由の意味、強まる監視

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コラム「憲法季評」 法哲学者・松尾陽さん

 過去の自分を思い出そうとする時、スマートフォンの中の写真を遡(さかのぼ)ってみるようになった。そこには、旅先の記録、おいしかったワインの銘柄などの写真が並ぶ。また、それらは、インターネット上に自動的に保存され、スマホが壊れても残り続ける。ネットの方が正確に、また、(人間の肉体がやがて死を迎えることを思えば)長期に、「私」を記憶しているかもしれない。

まつお・よう 1979年生まれ。名古屋大学教授。専門は法哲学。編著に「アーキテクチャと法」。

 情報技術は急速な発展を遂げた。日常生活、経済活動などの多くのことが、何らかの形でネットとの接続がなされながら営まれている。仮にあなたがスマホを持っていないとしても、社会はあなたを何らかのシステムに記録する。情報技術がさほど発達していない時代でもそのようなことはなされていた。しかし、現在では、ヒトの能力をはるかに超えたデータの蓄積と処理が可能になっている。

 このようなことの推進が「デジタル化」と呼ばれる。菅義偉首相は、昨年10月の所信表明演説で、デジタル化をさらに推進する方向性を示し、また、この9月1日から行政の側からデジタル社会の形成を進めるデジタル庁が発足する。デジタル社会形成基本法には、デジタル化の理念が「情報通信技術の恵沢をあまねく享受できる社会」を実現することだと規定されている。日本国憲法の前文には、「自由のもたらす恵沢」という文言がある。このデジタル化の理念においては、自由が情報通信技術に置き換わり、その恵沢があまねく行きわたることが目指される。

 戦後まもなくつくられた日本…

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