創業家内紛、個人株主が蜂起…異例の株主提案可決は問う

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編集委員・堀篭俊材
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ファンドによる株主提案が可決された天馬の株主総会=東京都北区
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 当事者の意に反し、株主が求めた取締役交代が可決される異例の事態が、6月にピークを迎えた今年の株主総会で繰り広げられました。創業家の内紛が背景にあったり、個人株主の「実力行使」に他の株主が同調したり――。二つの攻防から、「会社はだれのものなのか」を考えます。

発端は不祥事、社外取締役は動いた

 質問に立った株主の男性が、壇上の役員に呼びかけた。「会社は創業家のものじゃないですよね」。6月29日、プラスチック製品メーカーの天馬が都内で開いた定時株主総会。総会の議長を務めた広野裕彦社長(51)は答えた。「会社をつくった創業家はリスペクトするが、忖度(そんたく)はしません」

 天馬の株主にとって、「創業家」は最大の関心事だ。家庭用の収納ケース「Fits」で知られる天馬は1949年、4兄弟が創業した。家電や自動車のプラスチック部品なども手がける。長男・次男・四男が社長をつとめた創業家は、上場後も大株主として影響力を持った。

 「お家騒動」の発端は不祥事だった。

 ベトナムにある天馬の子会社が税金の追徴をまぬがれようと、現地の公務員に現金を渡していた――。昨年春、外部の弁護士らによる第三者委員会が明らかにした。

 報告書は、重要な事項は創業家が話し合って決めるのが当然という雰囲気が社内にあり、「取締役らに経営の最高意思決定者である自覚が欠けていた」と指摘。当時の役員が、贈賄疑惑を「監査等委員」に知らせずに処理しようとしたことも問題視された。

 天馬は、社外取締役を中心にした監査等委員が独立した委員会をつくり、取締役会をチェックする監査等委員会設置会社だ。

 社外取締役で委員の一人だった北野治郎氏(65)は、出身である日立製作所のグループ会社で管理部門を中心に歩んだ。その経験を他社で役立てようと2年前、人材会社の紹介で天馬に来た。北野氏には、贈賄疑惑は「許せない法令違反」と映った。

 監査等委員会は当時の取締役に損害賠償を求めて、昨年12月に提訴した。役員の責任追及に慎重とされた広野社長ら他の5人の取締役たちと、亀裂を深めていった。

 6月29日の株主総会で最も…

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