「カエル跳び」できない日本 野口悠紀雄さんの憂鬱

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聞き手・福田直之
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 スマートフォン、キャッシュレス決済、電気自動車電子商取引……。一昔前は技術で遅れていた中国が、今や世界の先端を行っています。こうした現象は、カエルが跳んで一気に抜き去るさまから、「リープフロッグ(カエル跳び)」と呼ばれます。どうして中国は飛躍を遂げたのか。この先、日本にも逆転の可能性はあるのでしょうか。経済学者の野口悠紀雄さんに聞きました。

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野口悠紀雄さん

 ――リープフロッグとはいったい何でしょうか。

 「遅れていた者が先行者を抜き去ることを言います。追いつくだけのキャッチアップとは違い、先に行くという点が重要です。中国はめざましい発展を遂げました。技術面の発展の多くはリープフロッグで説明できます。まず重要なのは、中国が遅れていたという点。そのため、新しい技術を導入するにあたって社会的な制約がなく、積極的に採り入れられました。これがリープフロッグを起こす大事な要素です。かつては先進的な立場にいたため、その後開発された技術を使いたがらない日本とは対照的です」

典型例はスマートフォン

 ――中国では、どんな変化が起きたのですか。

 「典型例はスマートフォン電子商取引、キャッシュレス決済です。日本では特に高齢者がスマートフォンを使えず、新型コロナワクチンの予約も電話でしかできない、ということが起きていますが、中国では誰でもスマートフォンを使いこなしているのです。なぜかというと、固定電話がほとんど普及していなかったから。電話がなかったから、スマートフォンという便利な新技術が登場すると、高齢者にも一気に普及しました。一方、日本は普及している固定電話で、高齢者は用が足りてしまう。今さらスマートフォンを導入しなくても暮らせるわけです」

 ――確かに日本では、今も一昔前のガラケー(携帯電話)に根強い人気がありますね。電子商取引はどうですか。

 「日米では充実した流通網が古くから整備されていました。日本で電子商取引が中国ほど普及していないのは、すでに各地に小売店があるからです。一方、中国は全国どこからでも何でも手に入る状態ではなかった。小売業のネットワークが弱かったため、電子商取引が一気に広まりました」

 ――キャッシュレスも、源流の一つはネット通販大手のアリババ集団の通販でした。

 「非常に巧みな決済方法を生み出しました。中国では取引相手に対する信用がなく、ネット上の商取引はうまくいきませんでした。そこで、あらかじめアリババが購入者からお金を預かり、販売者が品物を届けたと確認できたら、アリババが販売者にお金を渡す。そうすることで代金と品物の受け渡しを確実にできるようにしました。中国社会での信頼関係の不足に対応したビジネスモデルだから急成長したのです」

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中国ネット通販大手アリババ集団のセールのイベント会場=2017年11月、上海市、福田直之撮影

 ――不便さがイノベーション(技術革新)を生むのですね。

 「ビルを建てるには、更地の…

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