部員3人、新米監督の挑戦 部員0人の苦難を乗り越えて

小野智美
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 連合チームで夏に挑む那須(栃木)は教諭4年目の新米監督と部員3人。つかず離れず、ぶつかりながら、それでも球を追ってきた。

 「もうやめたい」

 昨年の秋季県大会前。当時1年だった印南龍人さんとヘレラ・アウロンさんは厳しい練習に耐えかねて監督に訴えた。3年部員が1人いたが、練習はほぼ2人だけ。コロナ禍による練習不足を埋めるため、高野寛史監督(31)の指導にも熱が入った。子どもを叱る親のように、つい口うるさくなってしまった。

 高野監督は13年前、古豪宇都宮商の主将として最後の夏に臨んだ。甲子園をめざしたが、延長戦の末、1回戦で敗れた。中央大に進み、東京で就職したが、燃焼しきれなかった最後の夏が忘れられなかった。

 悩んだ末、高校野球に関わりたいと退職し、教員をめざした。試験に受かり2018年に那須に赴任。監督になった。だが、そこにあったのは宇商とは全く違う野球だった。部員1人とマネジャー1人。唯一の部員もほどなく退部した。

 「熱闘甲子園」の主題歌を聞きながら、誰もいないグラウンドを整備した。選手を探して近隣の中学校の練習を見て歩いた。

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 昨年春、ヘレラさんと印南さんが入部した。我流だったヘレラさんには、高野監督は球の握り方からグラブさばき、腕の振り方、打席での足の使い方まで付きっ切りで教えた。「気配りなど、社会で必要なことが野球には詰まっている。それを身につけさせたい」と願って、つい声が荒くなる。「早く早く、グラウンドは歩かない」。距離が近い分、欠点が目についた。

 部員が多ければ、監督の目を盗んで手も抜けるが、サボれない。退部を申し出たヘレラさんは勇気を出して言った。「先生みたいにうるさい人はあんまり好きじゃない」

 「甘いな」と思いつつ、高野監督は真剣な2人に「少し緩めるか」と反省もした。

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 連合チームを組む益子芳星は部員7人。花田知晃監督(56)は連合チームの監督も務める。出身校の宇商監督を皮切りに、30年以上野球を教えてきた。

 週末の合同練習で、ノックをする花田監督は「鳥になれ」と言い、腰を落として両手を広げてみせた。動きをまねたヘレラさんはきっちり捕球した。「新しいスパイクはまめができやすいから履きならして」と優しくアドバイスも。高野監督も大先輩と選手のやりとりを真剣に見つめた。

 那須の2人は「わかりやすく教えてくれる」「絵も描いて教えてくれる」と花田監督推しだ。一方、高野監督については「言っていることが難しい」と依然、手厳しい。

 それでも練習試合などを通じて、自分たちの甘さも痛感した。今春、1年1人が入部。準備も片付けも楽になった。後輩になさけない姿は見せられないと気持ちも切り替わった。試合の送迎をし、道具も買いそろえてくれる親への感謝も口にするようになった。

 相変わらず指導に力がこもる高野監督だが、自主練に励むようになった部員たちに目を細める。「階段を一つ上ったかなあ」

 9日の栃木工戦には、高野監督が担任を務めるクラス全員が応援に行こうと計画している。(小野智美)