ウーバー配達の現実を自撮り 東京自転車節・監督に聞く

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藤えりか
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シネマニア経済リポート

 コロナ禍で、仕事はすべて消滅。大学時代に借りた奨学金550万円の返済期限も迫る。地元には仕事がない。山梨県の山あいに住む青年が行き着いたのは、東京でウーバーイーツの配達員をすること。そして、その様子を自撮りでドキュメンタリー映画にすることだった。そこで見えた現実とは――。10日に全国公開される「東京自転車節」の監督、青柳拓さん(28)にインタビューした。

 「東京自転車節」は2020年3月末のある夜、甲府市内の居酒屋の前でハンドルを握る青柳さんが運転代行の仕事をする場面から始まる。日本映画大学を卒業後、映像制作の傍ら3~4年続けたアルバイトだったが、コロナ禍で外出する人が減って依頼が激減し、この日で解雇に。東京で時折していた映像制作の仕事もコロナで途絶えた。父母や祖母と暮らす山梨県市川三郷町には「仕事がない」。祖母がもらう年金も、亡き祖父が残した借金返済で消えていく状態だった。

 そんな中、大学の先輩で映画プロデューサーの大澤一生さん(46)から近況を尋ねる連絡が。仕事がないと伝えると、「ウーバーイーツやったら? コロナで需要が高まってるらしいよ。稼ぎながら撮影もできるし」。

 山梨県は飲食宅配代行サービスの「空白区」。東京へ行こう。家族の猛反対に遭いながらも、祖母の手作りマスクを着けて撮影用にiPhone2台とアクションカメラ「GoPro」をひっさげ、川沿いの山あいの道を「地元の友だちに借りた古いチャリ」でこぎ出した。所持金はわずか8千円。友人宅や路上などで寝泊まりしながら、東京・新宿を拠点に配達員としてもがいた一部始終を、映画はつづる。

 初日の稼ぎは、9時間42分…

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