水球五輪代表ら選手を支えて11年 ブルボン社長にきく

聞き手・戸松康雄
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 【新潟】東京五輪の水球競技に、ブルボンウォーターポロクラブ柏崎(ブルボンKZ)に所属する志水祐介棚村克行稲場悠介小出未来(みく)の男女4選手と審判の津崎明日美さんが参加する。大学卒業後もプレーできる社会人クラブチームとして発足して11年。ネーミングライツ命名権)スポンサーであるブルボンの吉田康(やすし)社長(66)に、クラブを支えてきた理由や今後のあり方を聞いた。(聞き手・戸松康雄)

 ――スポンサーになった経緯は

 新潟産業大学の学長だった広川俊男さん(故人)と、広川さんの筑波大水球部の後輩で産大に招かれた青柳勧さん(現・シンガポール代表監督)が来て、「社会人チームができれば水球のレベルを上げていける。6年間支援してもらえたら、五輪に出られるような強いチームができる」と言われた。

 ただ、その前からブルボンとしてスポーツにどう関わるか、を考えていた。柏崎のような「地方の地方都市」では、野球やサッカーのようなメジャーなものではない方が、長く続けられるのではないか。国体会場になった水球やハンドボールならば、と考えていた時に、水球の話が来て『ああ、そうか』と思った。

 ――なぜ、スポーツと関わろうと考えたのですか

 安全で安心な食品を安定的に提供し、社会の困難な状況でお役に立つというのが創業以来の方針。この先に追求するのは「健康」だ。「食」は本業だけど、スポーツ、文化活動も一緒にやっていかないと、健康的な企業になれないし、社会的な貢献もできない。私は囲碁をやるのだけど、そのための布石とか手筋を考える中で、水球が出てきた。

 ――11年間の実績をどう見ますか

 日本選手権では、日本体育大のチームと優勝を争うようになった。全体的にレベルが上がったことが、2016年のリオデジャネイロ大会での32年ぶりの五輪出場につながった。今回は開催国枠の出場だが、さらに強くなっていると思う。ただ、柏崎では練習プールの柏崎アクアパークが、冬はスケート場になるので、長岡まで行かなくてはならない。年間を通じて練習や試合ができる環境づくりが課題だ。

 ――選手にとって仕事の確保も重要な問題でした

 1社だけでなく、柏崎市内などの企業が採用して、スポーツと仕事を両立する仕組みに向けて取り組んでいる。ただ、代表選手になるとチームの要請に応じて合宿や練習に参加しなければならず、仕事が難しくなる。その時は、うちの所属になればよいということでやっている。いまは、代表選手を含め、6人がブルボンの社員だ。

 ――東京五輪後も支援を続ける考えですか

 頑張って支援していかなければならないと思っている。また、水球の裾野を広げることにも注力したい。

 ――足がつかない状態でプレーする水球には、水深2メートル以上のプールが必要です。プレーヤーは試合中、立ち泳ぎを続けなければなりません。一般の人にはハードルが高いスポーツです

 普通のプールでも、ライフジャケットを着れば大人でも浮いてしまい、足がつかなくなる。そこで、ルールを決めれば、泳ぎが達者じゃなくても、楽しめるスポーツになるのじゃないか。プロ野球を支えているのは草野球。草野球的に楽しめるものにしたい。人数も通常の7人より増やしてパスが回りやすいようにする。ママさんバレーは9人制。あれは成功例だと思う。

 ――楽しそうですね。そのスポーツの名称は

 「レスキュー水球」はどうだろう。新潟だけでなく、県外でも国体の会場になった都市と交流をするところまで持っていきたい。世代を超えてライフジャケットを着て楽しむ。私たち企業はそれを協賛していく。今のうちに準備をして、すぐに動きたい。

ブルボンKZの歩み

2010年 社会人チーム、ブルボンKZ発足

 12年 ロンドン五輪予選で6人が男子日本代表に選出されるも、五輪出場を逃す

    日本選手権で初優勝

 15年 柏崎アクアクラブと統合。小学生から大学生、社会人までの幅広いクラブに

    男子日本代表がリオデジャネイロ五輪予選を突破

 16年 32年ぶりの五輪出場、4人が代表に選ばれる

 18年 日本選手権で2回目の優勝

 21年 東京五輪。男子の日本代表に3人、初出場の女子に1人が選ばれる

     ◇

 「新潟生まれの代表選手を育てなければいけないな」。インタビューの中で吉田康社長がこう語った。ブルボンKZには大学卒業後も競技の継続を願う選手が全国から集まってくる。代表の志水選手は熊本、棚村選手は沖縄、小出選手は千葉、大学生の稲場選手は富山県出身だ。

 一方、クラブは地域貢献の一環として小学校での出前授業にも力を入れている。ロンドン五輪予選の日本代表で、柏崎市教委「水球のまち推進室」主査とクラブ強化部長を兼ねる永田敏さん(40)は「ボールを使うことで、子どもたちの水への恐怖心が薄れる」と効果を話す。

 今年最初の授業となった6月25日の同市立半田小学校。リオ五輪代表の筈井(はずい)翔太コーチ(34)と一緒に、片手でのパスを披露した新潟産業大2年、水野楓(かえで)さん(19)は、市立荒浜小4年の出前授業で水球に出会い、競技の道を進んだ。小学校で指導していたのは永田さんだった。

 「子どもたちが、自分のように興味をもってくれたら、うれしい」と水野さん。この10年余り、吉田社長の願いに向けてまかれた種は、しっかり水を吸って、芽を伸ばし続けている。