営業担当がまさかの社長に 社員は年上、一度は断ったが

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重政紀元
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 経営は好調なのに後継者がいないため事業を畳む中小企業が増えている。従業員や取引先との問題だけでなく、地域経済の衰退にもつながりかねない。商工団体などが間に入り、「事業承継」の支援に動き出している。(重政紀元)

 一営業担当だった自分が社長になるとは――。

 電設資材の販売、設備工事などを主要業務とするエバラデンキ(市原市、従業員14人)は5月に創業者の白鳥政孝さん(86)から従業員の永岡真一さん(41)に社長を引き継いだ。2人に縁戚関係はなく、親族外承継になる。

 同社は1959年創業。京葉コンビナートの埋め立てとともに発展した。「1日に2回、3回とお得意先に通った。苦しかったが支払いを現金にすることで信用を得た」(白鳥さん)。安定した取引先を持ち、コロナ禍でも業績は変わらないという。

 悩みの種が後継者だった。3人の子どもは事業を継ぐ意思はなかった。実は60歳の時に社長を従業員に譲った。だが「後継者は高圧的で、社内で自由に話せる空気がなくなってしまった」。復帰後、外部登用も試みたがうまくいかなかった。

 そんな中で目を付けたのが、2004年に入社した永岡さんだった。工事の現場で働きたいという希望を持って入社したが、「工事はほかの人でもできる。自分が営業に回った方が会社の利益になる」と考え、白鳥さんとともに地域を走り回っていた。

 2年前に話を持ちかけられたとき、永岡さんは「責任が重すぎる」と断った。社員の多くは年上で、まとめる自信がなかった。ただ、1年以上かけて説得され、「今まで社長がつくった土台を崩してはいけない」と承諾した。

 承継の実務は県信用保証協会が相談に乗ってくれたが、課題は株式承継だった。事業が好調なことで、株式の評価額は3千円を超していた。まずは永岡さんが2万株中千株を買い取り、時間をかけて3分の2まで買い増すことにした。「譲ることは証書で取り決めている。撤回することはない」(白鳥さん)

 社長になっても永岡さんが営業の先頭に立つことに変わりはない。「自分もここで育ててもらい成長してきた。他の社員とともにステップアップしていきたい」

従業員を「路頭に迷わすわけには…」

 思い入れのある事業を思い入れのある経営者に――というケースが、なでしこケアサービス(柏市)から、Origin(茨城県つくばみらい市)への事業譲渡だ。

 なでしこは矢内好さん(71…

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