大雨の備え大丈夫? 被災者に聞く「なくて困ったもの」

棚橋咲月
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 梅雨前線の影響のため9日も各地で大雨に見舞われている。災害には事前の準備が大切だが、実際に体験してみて初めて分かることもある。昨年7月、熊本県南部を襲った豪雨で自宅が被災した人たちに聞いた。あってよかったものは? なくて困ったものは?

 甚大な被害が出た熊本県人吉市に住む女性(47)は、中学1年と小学3年の息子、夫の4人暮らし。2階建ての自宅は床上1・4メートル浸水した。

 被災後、なくて一番困ったのが現金だ。停電でATMが使えず、クレジットカードや電子マネーで支払いができなくなった。「1万円札ではなく、千円札や小銭などを家に置いておけばよかった」

 家の玄関には、着替えや水などを入れたリュックを置いていた。しかし、豪雨の朝、車で避難するとき持ち出すことはなかった。「家に水が来るとは思わなかった。後で取りにいけばいいかと」。持ち出せばよかったと今は思う。

 自宅に戻ると泥だらけだった。かき出しのためスコップや水切りワイパー、バケツといった掃除道具を買いに行くも、売り切れ。しばらくは、ちりとりなど自宅にあるものでしのいだ。

 気をもんだのが、子どもたちの薬。2人とも気管支炎で薬を毎日飲む必要がある。母子手帳お薬手帳、保険証は持ち出したため、医療機関の受診がスムーズだったという。

 自宅でのけがも要注意。被災後、リフォームするまで乾燥のため床の板をはぎ、格子状の木材の上に必要最低限の板を置いたところ、次男が隙間に落ちた。木材のとげが刺さったこともあった。「子どもは動き回るので気が抜けない。大けがではなかったが、もっと目配りすればよかった」

 人吉市の住宅街に住む上村恒子さん(60)は、2階建ての自宅の1階が天井まで浸水した。

 被災後、保育士の仕事をしたり、介護が必要な母の預け先を探したりしながら家の掃除を続けた。疲労やストレスがたまったとき、気分転換になったのが自宅の2階にあったピアノを弾くことだった。「好きなことをしたら落ち着いた」

 つらかったのは、お風呂が浸水で使えなくなったこと。銭湯に行ったが混雑しており、仕事仲間や近所の人と会えばお互い気を使う。1週間に1度は家族風呂も使い、リラックスを心がけた。

 東京の娘がブルーシートやIHコンロなどを送ってくれた。支援団体から電化製品や寝具、水なども受け取った。こうしたものも、準備しておけばよかったという。「家族や支援団体など、周りの助けが得られたのはよかった」と話す。

 今、車にはミニチェアや雨具、カッパ、長靴を備えている。大雨がひどくなる前に、高台に車で移動するつもりでいるという。(棚橋咲月)

■在宅避難の備え「している」4割

 内閣府が2016年に15歳以上の男女1万人に実施したウェブ調査では、防災の備えに「十分に取り組んでいる」「できる範囲で取り組んでいる」と回答した人は37・8%だった。

 新型コロナの感染拡大後、分散避難や在宅避難が推奨され、備えや避難のあり方の見直しが進む。損保ジャパンが昨年11月に30歳以上の男女1320人に実施したアンケートでは、新型コロナで避難方法に対する意識が「変わった」と答えた人が49・7%。在宅避難の備えを「している」と回答したのは41・7%だった。

 調査に携わったSOMPOリスクマネジメントの石井和尋部長代理(当時)は「自宅でしっかり備えておくことが大切だ」と話していた。

■被災者が「なくて困ったもの」「あってよかったもの」

なくて困ったもの

・現金

・水切りワイパーと泥かき用のスコップ、バケツ

・ガスコンロ

スマホの充電器

・乾電池

・ブルーシート

あってよかったもの

・乗用車

・長靴、軍手、カッパ

・身分保証書、通帳、印鑑

・医薬品、お薬手帳母子手帳

・電動ドライバーなど日曜大工の工具

・お菓子など甘い物

※上村さんらへの取材から