宝塚歌劇団・専科の轟悠(とどろきゆう)の退団まで、3カ月を切った。「感傷にひたるより、私が学んできたことを下級生に渡していきたいという気持ちが強くあります」。最後の舞台「婆娑羅(ばさら)の玄孫(やしゃご)」が7月9日に開幕。演出家の植田紳爾(しんじ)には「明るく楽しい作品に」とお願いし、「じゃ、爽やかに笑顔で」と応じてもらった。
江戸文化華やぐ街を舞台に、得意の日本舞踊を織り交ぜた人情モノ。子どもたちを教え導く細石蔵之介役には、自身のイメージが重なる。「でも、美化しすぎかなって、私は苦笑いしながら頑張っております。主題歌に『轟け』という言葉が何回も出てくるんです。恥ずかしくて」。植田の大きな愛情を感じる日々だ。
雪組のトップスターを経て、専科のベテラン男役として各組で主演を張り続けた。胸にはいつも、「宝塚の品格を保ちなさい」という故春日野八千代の言葉があった。
「血のにじむような苦しいこと、そして楽しいこともひっくるめて、みなさまの思いの中に私たちは立たせていただいている。100年以上の歴史の中で、宝塚歌劇に携わるみなさんが高みをめざしてこられての今だと思います」と語る。
「在籍していた年数じゃなくて、中身の濃さ、時間の過ごし方が大切」と語る轟さん。後輩たちへ残す言葉とは。
1985年の初舞台「愛あれ…