女子生徒見つめる「エロ眼」、刑事が追う 痴漢警戒ルポ
地下鉄の階段をうつむきがちに上る中年男性に、男女2人が声をかけた。
「なんでか分かる?」
男性は白髪交じりの頭を下に向けたまま、足を止めずに改札へ向かう。
「なんで何度も同じ区間を行ったり来たりしてたの?」「切符は持ってる?」
問い詰められ、あきらめたようにカバンを開ける。だが、不審な往復の理由は、なかなか答えようとしなかった。
声をかけた2人は、電車に乗り込み、痴漢を警戒する私服警察官。6月中旬、愛知県警鉄道警察隊の「特務係」に記者が2日間同行した。
同行1日目:中年男「偶然手が当たれば……」
村上晴美(はるよし)警部補(57)は、ワイシャツにグレーのスラックス姿。普通のサラリーマンにしか見えない。ブラウスの上に紺のカーディガンを羽織った女性巡査部長(30)とペアを組み、通勤風景に溶け込む。
女性巡査部長はホームの柱に身を寄せて立ち、不審者がいないか捜していた。
時々、電車を待つ列に並び、降車客に紛れて列から外れ、また警戒を続ける。
通勤ラッシュはピークを迎え、電車の間隔は2分に1本。ホームは学校や職場に急ぐ人々であふれかえる。
薄着の人が増える夏は、痴漢や盗撮の相談が増える時期です。混み合う電車に乗って、降りて、また乗って……。そんな挙動不審な乗客が2人見つかりました。記事後半では、動画や、高校時代に痴漢の被害に遭った記者の体験も紹介します。
巡査部長が突然、柱の陰から飛び出した。乗客の間をすり抜けて急ぐ。誰かを追っているようだ。
足を止めたのは、比較的人が少ない列。
「あいつ、怪しい」
乗客が電車に乗り込んでも、ホームに残ったままの人影があった。白髪の交じった中年男性で、灰色のパーカを着ている。
「さっきも見たな」。巡査部長には、十数分前にもこの人物とすれちがった記憶があった。長時間ホームをうろうろするのは、普通の通勤客ではない。
巡査部長は男性の真後ろに並んだ。
午前8時15分、電車が来た。ほぼ満員だ。乗り込めそうなスペースはなかったが、ドアが閉まる直前、巡査部長は体をねじるようにして、男性の後ろに滑り込んだ。
満員の車内。男性は薄着の若い女性の背後に立った。
左手はつり革をつかんでいる…