じゃじゃまるの隣で悩んだ方向性 歌のお兄さんの36年

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滝沢卓
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 じゃじゃまる、ぴっころ、ぽろりに囲まれながら、新人の「歌のお兄さん」は人知れず、悩みを抱えていた。

 「おかあさんといっしょ」のスタジオで多くの子どもたちと過ごす時間は楽しかった。

 ただ、舞台裏でふと、こう思うこともあった。

 「正直、『違う世界』に来ちゃったな」

夢だった「武道館

 NHK「おかあさんといっしょ」の第7代歌のお兄さん(1985~93年)で、シンガー・ソングライターの坂田おさむさん(68)の経歴は異色だ。

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歌のお兄さんとして「おかあさんといっしょ」に出演していた33歳の頃の坂田おさむさん=本人提供

 明治大学の学生だった時、エレキギターを手に、バンドでプロの道に。卒業後に脱退し、アルバイトの傍らレコード会社に売り込みを続け、24歳でシンガー・ソングライターとしてソロデビューした。

 いつかは聖地・武道館のステージに立ちたい――。夢を抱えながらも、きっかけをなかなかつかめなかった。

 やがて結婚して、娘が生まれた。「おかあさんといっしょ」はテレビの前で「見る側」だった。

 そんな時、仕事で知り合った作詞家の勧めで、NHKに曲を売り込んだ。「フワフワリ 春の風」の歌い出しで今も知られる「はるのかぜ」が採用されると、ディレクターから声がかかった。

 「オーディションを受けてみない?」

 そうして、32歳の歌のお兄さんが誕生し、テレビに「映る側」になった。

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大学在学中にデビューしたバンド「宿屋の飯盛」でエレキギターを弾く坂田おさむさん=本人提供

残っていた「恥ずかしさ」

 はじめは自信を持てなかった。自分がテレビで見てきた歌のお兄さんは、「音楽を専門に学び、正しくきれいに歌うイメージ」。自分にそんなことができるのか。ロックやフォークの道を歩んできたことの自負もある。「その気持ちにどう折り合いをつけたらいいのか」。また悩んだ。

 そんな頃、予想しない形で夢がかなった。2年目の時、番組のコンサート会場が、あこがれの武道館だった。素直にうれしかった。

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第7代歌のお兄さんとして「おかあさんといっしょ」に出演していた頃の坂田おさむさん=本人提供

 「でも、歌うのは『アイアイ』とか『いぬのおまわりさん』なんだよなあ」。子どもの歌を、まだ「少し恥ずかしい」と思っていた。

 コンサートは大盛況だった。そして後日。

 思わぬ相手から電話があった。

「どんないろがすき」などで知られる坂田おさむさんが、今年の「童謡文化賞」を受賞しました。後半では、子どもの頃にきく歌が持つ力や、コロナ禍の今思うことを紹介します。

 かつてソロ活動中にライブハ…

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