ピルは「悪魔の薬」じゃない 選手の月経異常と闘う医師

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文・岩本美帆 写真・内田光
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 間もなく開幕する東京五輪には、多くの女性選手が出場します。医師の能瀬さやかさんは東京大学病院に開設した「女性アスリート外来」などで、女性選手にとって切っても切れない「月経」について、産婦人科医の見地からサポートをしてきました。「生理が止まって一人前」とすら言われ、長らくケアされてこなかった女性アスリートの月経について、どんな取り組みが必要なのか、なぜ産婦人科医としてアスリートを支えるのか、聞きました。

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能瀬さやかさんは東京大学医学部付属病院南研究棟の中庭にある大きなイチョウの切り株に腰掛けると、笑顔を見せた=東京都文京区

 ――スポーツドクターであり、産婦人科医。この分野に進むきっかけは?

 父が産婦人科医というのもありますが、産婦人科って、病院を訪れた患者さんに唯一「おめでとう」と言える分野ですよね。それがいいなと思いました。それに自分自身、トップアスリートでは全くありませんがバスケットボールをずっとやっていたので、スポーツに関わりたいという思いも強かった。そんなとき、小さな記事を見つけて。女性アスリートの「三主徴」、三つの主な健康問題について書かれていた。「無月経」「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」「利用可能エネルギー不足」。すなわち運動量に対して食事量が少ない状態になると無月経となり、骨粗鬆症の原因になるということ。この記事を読んで「ビビビッ」と来ましたね。産婦人科の分野からスポーツ選手を支えられると。

 ――そもそも、月経が無いというのは良くないことなのでしょうか。

 良くありません。無月経になると女性ホルモン「エストロゲン」が不足します。エストロゲンは全身に働いていますが、中でも骨を強くする働きがあるため、無月経になると骨密度が低下し若い選手でも骨粗鬆症になる。骨量は20歳くらいに最大になります。特に10代の頃にエストロゲンが長期間低下してしまうと、引退後も骨量が低いまま経過するため、骨折しやすくなるなど、生涯の健康にも影響を与えます。

「生理が止まって一人前」いまも

 ――治療法は?

 利用可能エネルギー不足による無月経ではエネルギーバランスの改善をめざします。ホルモン療法はまず行うべきではありません。選手の中には「月経が来ないのが都合がいい」くらいの考えで23歳になっても一度も月経がないという人もいました。10代の頃から月経について教育を受けていないので何が正常で何が異常なのか知らないんです。

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のせ・さやか 1979年、青森県八戸市出身。2003年、北里大学医学部を卒業し、06年、東京大学医学部産婦人科学教室に入局。12年、国立スポーツ科学センタースポーツメディカルセンターへ。東京五輪・パラリンピックに向け選手の医学的サポートに取り組む。17年、東大病院女性診療科・産科に「女性アスリート外来」を開設。

 ――アスリートの食事制限をめぐっては、摂食障害やそれが原因の万引き事件などが問題になりました。

 選手の摂食障害は本当に多く…

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