競争を促すバイデン政権の大統領令 全米商議所は批判

ワシントン=青山直篤
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 バイデン米大統領は9日、IT、農業、運輸など幅広い分野で、大企業による寡占に歯止めをかけ、競争を促す大統領令に署名した。競争政策は議会や司法の動きに左右されるものの、市場介入で肥大化する企業に対抗しようとする意思を示した。

 バイデン氏は署名に際し「我々は過去40年間、大企業に権力が集中するのを許してきたが、成長は阻害され、あまりに多くの人々が取り残されたと感じた」と指摘。行政府の裁量で進められる72項目の政策を示し「政府一丸となった取り組み」を関係部局に求めた。

 政権の声明によると、米国では過去20年間に「75%以上」もの業種で、少数の大企業が市場を支配する傾向が強まった。特に、GAFA(ガーファ)と呼ばれる巨大IT企業や食肉企業などで寡占の弊害が問題視されてきた。

 大統領令では、寡占を通じて企業が賃金を抑えないよう、米連邦取引委員会(FTC)などの反トラスト(独占禁止)当局に、より厳しい法令の運用を促した。巨大IT企業の買収やデータ管理への監視も強めるよう求めた。

 また、食肉企業の巨大化で不利益を受けてきた小規模農家の保護も盛り込んだ。航空便の手荷物遅延の返金ルールを定めたり、インターネットの解約代金を規制したりすることなど、消費者の関心の高い項目も検討するよう指示した。

 バイデン氏の競争政策の特別補佐官を務めるコロンビア大学教授のティム・ウー氏は、巨大企業の分割を求める急先鋒(きゅうせんぽう)として知られる。政権発足前の昨年の論文で「政府一丸」の表現を使い、今回の大統領令の方向性を既に示していた。

 ただ、米国では行政府の権限はかなり制約される。民主党のオバマ元大統領も政権末期の2016年に競争を促す大統領令を出したが、その後のトランプ共和党政権への交代もあり、実効性は乏しかった。全米商工会議所は今回の大統領令について「『米経済で企業集中が進み、技術革新に向けた民間投資が滞った』という誤った信念に基づいたものだ」と批判した。

 米国では世界大恐慌期の1930年代からニューディール政策の流れを引き継いだ60年代ごろまでは、厳格な独占規制が進められた。80年代以降の規制緩和の流れを受け、最近の独禁政策は低調だった。司法界や学界で、政府介入に消極的な法解釈が主流となったことも要因となった。(ワシントン=青山直篤)