昨夏は出場辞退「先輩たちの分まで戦う」 沼津高専

山崎琢也
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 「新型コロナウイルスの影響で、いまだに通常登校ができず、部活動再開の見通しも立っていない」

 昨夏の独自大会出場校を伝える朝日新聞静岡版に、ある学校の出場辞退を伝える一文が載った。

 辞退したのは沼津高専(静岡県沼津市)。県外から通う生徒もいることから部活動が再開できず、県内で唯一、昨年の代替大会と秋季大会への出場を辞退した。

 同校では昨年3月からコロナ禍を理由に部活動が停止。10月に入って練習を再開したものの、練習時間は1日30分。笹本大志主将(3年)は「グラウンドで少し体を動かしただけでもう練習時間が終わるような状況だった」と振り返る。

 生徒らの働きかけもあって練習時間は段階的に延長されたが、今でも平日の練習時間はたった1時間半。笹本主将は「時間が全然足りない」と焦りを隠さない。昨夏・秋の大会に出場できなかったうえ、練習試合も自由に組めず、実戦経験の不足も課題だ。

 少しでも試合に近い練習をしようと、活動時間が長い土日には部内のチーム同士での実戦練習を取り入れる。便宜的に決めた主将同士が「ドラフト」を行いチームを作り、お互いに攻守を交代しながら試合形式で戦う。集中力を高めるため、試合は3イニング制。毎試合ごとにドラフトし直すためメンバーも1戦ごとに入れ替わる。

 同校の選手は16人。全てのポジションを埋めることができないため、捕手はネットで代用し、投手の代わりにピッチングマシンが「登板」することもある。前川哲司監督は「これなら打撃や守備を同時に練習できる。練習しながら試合もイメージできるこの練習が一番効率がいい」と狙いを語る。

 前川監督は「こんな状況なのに全員練習に出てくるし、やれと言ったらやめろと言うまでとことんやり続ける。すごく真面目な選手たちなんです」と話す。「今年の選手は力がある。だからこそ今年はちゃんとした形で夏を迎えさせてあげたい」

 高専(高等専門学校)は5年制。昨夏の独自大会に出場できなかった上級生もまだ在校している。後輩たちのため、放課後にグラウンドを訪れ、練習を手伝う4、5年生の姿がある。

 少ない実戦経験を補うため、元野球部員だった4、5年生で組んだチームと2度練習試合も行った。6月中旬に行った試合こそ、接戦の末、なんとかサヨナラ勝ちだったが、下旬の試合では相手を圧倒しコールド勝利。1日1試合だけだが練習試合も再開した。

 笹本主将は「夏に向けてやっとチームの状況も上向いてきた。目標は確実に1勝すること。全力を出し切って、先輩たちの分も少しでも長く夏を戦いたい」。2年分の思いを胸に10日、初戦に挑む。(山崎琢也)