加速するデジタル社会 高齢者が取り残されないためには
新型コロナのワクチン接種予約で、高齢者から「ネットやスマホではよくわからない」との声が相次いだ。加速する社会のデジタル化に、高齢者が取り残されていないだろうか。
すぐに新製品 ついていけない 辻真先さん(ミステリー作家・アニメ脚本家)
パソコンを使い始めたのは早い方でした。私自身が新しいもの好きですし、コンピューター好きのSF作家の友人、出版社の編集者たちから、インターネットの草創期以来、色々な話を聞いて影響を受けていたからです。私は今年、数え年で90歳になりますが、原稿はパソコンで書き、ツイッターもやっています。それでも戸惑うことがあります。
1932年生まれ。戦後日本の混乱期を舞台にした新作「たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説」など著作多数。
たとえば、新製品が短い間にどんどん開発・発売され、操作方法も変わる。それまで使い慣れた製品は、すぐに生産されなくなることです。
私が最初に買った情報機器は富士通のワープロで、1980年代初めでした。このキーボードは「親指シフト」といい、日本語の読みそのままでキーを打つことができ、打鍵回数も少なくて済みます。
ところが、マイクロソフトの日本上陸で、キーはローマ字変換仕様に取って代わられました。親指シフトの方が速く打てるので、私は今も使っていますが、私が使っている機種の生産はとうに中止されてしまいました。
おそらく、新製品をどんどん作って売ることで、日本の経済は回っているのでしょう。ですが、私たち消費者は旧製品のことを頭から消去し、新製品の使い方をまた一から覚えないといけない。むしろ海外の方が、昔ながらの製品を長く大切に使っています。日本の高齢者がデジタル社会についていけないのは、そんな事情も関係していると思います。
デジタル化社会に高齢者を取り残さないためにはどうすれば良いのか――。記事後半では、パソコン講師の原浩平さんやNTTドコモ「スマホ教室」運営責任者の蓑手康史さんにもインタビューしています。
スマホも持っていますが、弱っている視力のせいで画面の字がよく見えません。字を大きくするには、指を微妙に動かさないといけない。年を取ると、指が動きにくくなり、画面は見えにくくなる。そうしたことをメーカーの設計者はどれほど考えてくれているのでしょうか。
世の中がじわり変化するのを…
- 【視点】
台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏は、高齢者を「デジタル弱者」とみなす風潮に明確に反対する。デジタルファースト、つまりデジタル技術ありきで課題を解決しようとすると、どうしても、デジタル社会に対応できない「弱者」をお荷物とみなす風潮が生