国際課税、G20大枠合意 閣僚級会合で共同声明を採択

ベネチア=吉田貴司、和気真也
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 イタリア・ベネチアでの主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は10日、多国籍企業の「課税逃れ」を防ぐ国際課税の新ルールについて、大枠合意したとする内容の共同声明を採択した。10月の最終合意をめざすとした。

 声明では「我々はより安定的で公正な国際課税制度に関する歴史的な合意を成し遂げた」とうたった。会合に先立ち、事務レベルで約130カ国・地域が決めた「15%以上」の国際的な法人税の最低税率や、巨大IT企業などに課す「デジタル課税」の創設の二つの柱を承認した。アイルランドやハンガリーなどまだ態度を決めていない軽課税国にも今後、参加を呼びかけていく意向も示した。

 議長国イタリアのダニエレ・フランコ経済財務相は「法人税率の(税率の引き下げを競う)『底辺への競争』に歯止めがかけられる」と語った。最終合意までには課題も残るが、麻生太郎財務相は「(大枠合意で)まとまっただけでまずは十分だ」と話し、新興国を含んだうえで閣僚級で合意できたことの重要性を強調した。

 デジタル課税は、工場などの物理的な拠点がなければ課税できないとする約100年前に形作られた国際課税の大原則を転換していく意味を持つ。ネット検索やネット通販、SNSなどのデジタルサービスを世界中で展開する巨大IT企業は、工場などがない国でも大きな収益を上げているのに、課税されず、不公平感が高まってきたからだ。

 新ルールは、物理的な拠点がなくても、こうしたサービスの利用者がいる市場国が利益の一部に課税できるようにする。全世界の売上高が200億ユーロ(約2・6兆円)を超え、利益率10%以上の多国籍企業が課税対象としている。

 ただ、10月の最終合意に向けての課題は少なくない。交渉関係者によると、新興国側は、デジタル課税の対象企業をさらに増やしたい考えだ。20~30%の範囲で協議されている市場国が課税できる利益の配分の割合でも、なるべく高い水準を求めているという。

 会合に出席したフランスルメール経済・財務相は10日、「20%では不十分で、30%では多い。フランスの提案は25%での合意だ」と主張。また、最低税率の水準は「15%は不十分だと強く確信している」と語った。

 また、フランスなどが独自に導入したデジタル課税(DST)については、米国の要求に沿い、合意後に廃止する方向だが、時期などは固まっていない。ルメール氏は「できるだけ速やかに取り除く」と述べるにとどまった。

 また、コロナ禍で傷ついた世界経済の立て直しに向け、積極財政金融緩和などを念頭に、すべての政策手段を用いることを再確認。回復ペースは各国で格差があるため、支援策の「早まった引き上げ」を回避することでも一致した。一方で、回復が早い米国でのインフレ懸念が高まっていることを受け、「物価の安定」にも配慮しつつ進めることにも言及した。

 コロナ禍で債務返済が滞る低所得国への支援策の一つとして、国際通貨基金(IMF)が示している6500億ドル(約71兆円)相当の外貨調達枠を新規配分することを支持するなどとした。(ベネチア=吉田貴司、和気真也)