中京、初戦で逆転サヨナラ負け 2年前の夏の甲子園4強

佐藤瑞季
[PR]

(10日、高校野球岐阜大会 多治見工9-8中京)

 岐阜大会で、2019年夏の甲子園4強の第1シード中京が、初戦で多治見工に逆転サヨナラ負けを喫した。中京は八回表の攻撃が終わって8―3とリード。そこからドラマが起きた。多治見工は八回裏、樋口流唯(るい、3年)が満塁本塁打を放って1点差に。九回は適時打で同点とし、最後は相手投手の暴投で三塁走者が生還した。中京は継投策が裏目に出て、2年ぶり出場の夢は散った。

     ◇

 九回裏無死満塁。かつてないほどのピンチで、中京の小田康一郎投手(3年)は再びマウンドにたった。「抑えられる」。自信しかなかった。

 中京は序盤から得点を重ね5点をリードしたが、多治見工に八回に満塁本塁打で4点、さらに九回に1点を奪われ、追いつかれた。

 橋本哲也監督は「この場面で抑えられるのは小田しかいない」と、四回に降板させ、内野を守らせていたエースを戻した。「任せたぞ」という監督の信頼を目で感じた。「肩が壊れてもいい」。そんな気持ちで強気に投げた。

 2球で追い込んだ。だが、低めを狙った3球目のスライダーが暴投となり、三塁走者が生還。初戦敗退が決まった。

 相手校の校歌が流れても何が起きているのか理解できない。スタンドに向かって一礼をしたとき、ベンチ入りできなかったチームメートの顔が見えたが、申し訳なくて何と言えばいいのか分からなかった。

 140キロ台後半の球速も出ていたが、一回に先頭打者を含め四球を二つ与え、先取点を奪われるなどピリッとしなかった。小田投手が最後の打者に投げた球は147キロを記録した。橋本監督は「魂のこもった一球だった。持っている力をすべて出し切ってくれた。すべては私の責任だ」と話した。

 小田投手はエースで主将で4番打者。一昨年の夏には甲子園で活躍し、4強入りに貢献した。重要な役割を任せてもらっているうれしさもあったが、「2年ぶりの甲子園に、絶対出なきゃ」というプレッシャーも大きかったという。

 それでも「今日の試合は今までで一番楽しかった。自分は全然だめだめだったけど仲間が支えてくれた。こんないい仲間がいるチームの主将ができてよかった」。何度も涙をぬぐいながら、そう口にした。(佐藤瑞季)

     ◇

 5点を追う多治見工の八回裏1死満塁。途中出場した樋口流唯(るい)選手(3年)は、内角高めの直球を打ち返した。感触はあまりなかったというが、打球は左翼席へ。「よっしゃー」。思わず声をあげ、右手を突き上げた。

 小2で野球を始めてから初アーチ。しかもチームを勢いづける満塁弾。「とにかくうれしかった」

 甲子園に出られなかった兄の思いを継ぎ、優勝したい――。昨夏以降、多治見工野球部OBで中部大学でも野球を続ける二つ上の兄と一緒に、下半身強化のための自主練習に励んだ。毎日8合のごはんを炊いてもらい、母親につくってもらったおにぎりを食べた。身長173センチ。昨夏まで53キロだった体重は、この1年で20キロも増えた。

 この日、かぶっていたのは兄が高校時代に使っていた帽子だ。つばの裏には「All is well」(万事順調)と書かれている。本塁打を放った後、スタンドに来ていた兄の方を見ると笑顔だったという。「甲子園に一歩近づけた。この調子で頑張ります」と意気込んだ。(佐藤瑞季)