中学での約束が現実に 高校最後の夏、幼なじみと対戦
(10日、高校野球石川大会 津幡14-0七尾東雲)
五回、七尾東雲のエースで主将の光長颯(3年)は、この試合初めて打席に立つ津幡の中村比呂人(同)に、マウンドから笑顔を向けた。
3年間、待ち望んだ対戦だった。それが、高校最後の夏に実現するとは思わなかった。「思い切り打ってこいよ、なかひろ」。光長は心の中でそう思った。
保育園からの幼なじみ。小中学生の頃は一緒に学校に通ったり、公園で野球をしたりした。中学時代、中村に「強豪の津幡で一緒に野球やらんか」と誘われたが、技術や体力面に自信がなく、断った。それでも中学の卒業式で、「一緒の高校には行けないけど、高3の夏、絶対に戦おうな」と中村と約束を交わした。
高校に入学して間もない頃、野球を辞めようと思ったことがある。当時の体重は40キロ弱。肩は弱く、打撃練習では球をバットに当てるのが精いっぱい。練習についていく自信を失った。
「こんな役立たずがおっていいのかな」。あの時、すぐに中村の顔が頭に浮かび、LINEで相談した時のことが忘れられない。「最後まで諦めずに一緒に頑張るぞ」。その前向きな言葉のおかげで、今自分はここにいる。
マウンドで高ぶる気持ちを抑えながら、全力で投げた2球目の直球を、中村は芯でとらえ、左前へ運んだ。「やっぱりうまいな」。そう思った。
中村への感謝の気持ち。それをあの直球に込めることができたことは、「高校野球一番の思い出となった」。試合後、両チームのあいさつを終えると、中村のもとに駆け寄り、「次も絶対勝ってくれよ」と言って肩をたたいた。(敬称略)(小島弘之)
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