離島に若者を 元アスリートが三つの離島に鍼灸・整骨院

対馬通信員・佐藤雄二
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 五島列島長崎県)、石垣島沖縄県)、対馬(長崎県)――。離島に次々と鍼灸(しんきゅう)・整骨院を広げる元アスリートがいる。対馬出身の佐々木智和さん(39)。「島外に出ずとも施術を」「若者に離島で働く道を」。そんなポリシーに共感する仲間が集い、3島の5店舗で33人のスタッフが働くまでになった。

 佐々木さんは中学時代、島内の駅伝大会で区間賞をとるなど長距離走で頭角を現し、鎮西学院高校(長崎県諫早市)を経て実業団チームの三菱化学へ。だが3年目に廃部となってしまい、「支える側で日本一の選手をサポートしたい」と、選手からトレーナーに転身した。福岡のスポーツマッサージ院に勤めながら鍼灸も学んで腕を磨いた。九州実業団駅伝出場チームの合宿トレーナーを務めるまでに力をつけた。

 離島に目を向けたのは、妻の郷里・五島列島福江島を訪ねたのがきっかけだ。複数の高齢女性から「治療のためにわざわざ島外に通っている」と聞いた。「自分が島に行けばおばあちゃんが島を出る必要もなくなる」。そう思い立ち、28歳で五島への移住を決意した。

 2010年、福江島で1人で鍼灸院を開業。施術を求める人たちでにぎわうようになり、手応えを感じた。3年後、福岡で働いていた弟も加わって会社組織に。整骨院も併設した。

 「ほかの離島でも施術を必要とする人はいるはず」と、島外での事業拡張へ向けて求人活動を始めた。何度も専門学校に赴いて「離島が本土に劣ると思われる状況を変えたい」と訴え、卒業生を紹介してもらえるようになった。

 従業員を育成できる態勢を整え、17年に石垣島で開業。翌18年にはふるさと対馬にも事業を広げた。福岡ではトレーナーとセラピスト(施術者)を養成する講座も開講。こうして集まったスタッフの約8割は、島外出身の「I(アイ)ターン」だ。

 佐々木さんは、チームによる運営態勢づくりに力を入れた。島での施術を止めることなく島外での研修を進めるためだ。「離島だから遅れていると思われないように」と研鑽(けんさん)の努力も怠らない。

 「同業者がごまんといる都会で埋もれるより、離島の方が価値は何倍にもなる」と語る佐々木さん。自身の歩んだ道から、島出身のスポーツ選手のセカンドキャリアを意識する。「身体のことを学んで帰郷してくれれば、島の競技者の良き理解者になれる。受け入れる流れを作りたい」

 対馬での開業を機に、10年過ごした五島を離れた。久々に暮らす故郷で、釣りやシーカヤック、神社めぐりを楽しむ。戻ってくるまで、そんな島暮らしの魅力には気づかなかった。

 佐々木さんが経営者として掲げるテーマは、「離島を楽園に」。志のあるスタッフを島に迎え、島の人々の健康を守っていけば近づく目標だと信じている。(対馬通信員・佐藤雄二)