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母子手帳は「親子手帳」じゃだめ? 父親たちの問題提起

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大坪実佳子
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 俺って、育児に関係ないと思われているのかな……。

 3歳の長男を育てるさいたま市議の三神尊志(たかし)さん(40)は、役所で妻と妊娠届を出して母子手帳をもらった時、「母子」の言葉が気になった。産院では息子は「三神ママの赤ちゃん」と呼ばれ、産前産後の手続きのための書類には、母と子の名前の記入欄しかないものもあった。

 父親として一緒に子育てに関わりたいと思っていたが、「母だけが妊娠・出産、子育ての主体であるかのような社会の認識」を突きつけられたように感じた。母子手帳に代わる名称がないか調べると、「親子手帳」と呼んでいるところがあることがわかった。

 2001年に岡山市が全国に先駆けて採用し、愛知県小牧市那覇市福島県いわき市などが採り入れている。「母子(親子)手帳」「親子(母子)手帳」など表記は様々だ。

市議会で問題提起、反応は……

 三神議員は、同じ会派の市議に相談したところ「そういう視点は大事だよね」と賛同を得られ、議会で提案することを決めた。

 「母子手帳を、親子手帳に変更してはどうか」

 6月下旬、三神議員は市議会保健福祉委員会で質問。他の議員も大きくうなずいていたという。

 西田道弘保健所長は「母親だけでなく、父親や家族を含めて活用する視点を持ち、いずれも併記する方向で調整する」と答弁。来年4月から配る母子手帳の表記について、これから検討する方針だ。

 ツイッターでこの経緯をつぶやくと、他の自治体の議員から「議会で取り上げたい」「良い取り組み」などの声が寄せられた。

 一方で、「母子の健康管理や、つながりを大切にするべきだ」と反対の意見もあった。

 三神議員は「母子の健康を管理するという役割自体は大切だと思っている」としたうえで、「『親子』であれば、母だけでなくいろんな家族を含む。社会状況が変わる中で、名称も時代に合わせていく必要がある」と訴える。

手帳の始まりは「母子」だけど……

 母子手帳は、どんな位置づけなのか。

 母子手帳には、妊娠中の経過や赤ちゃんの体重、身長などを記録する全国共通のページと、子育て上の注意点や食事の栄養バランス、各自治体の相談窓口など市区町村ごとに独自の記載ができるページがある。母子保健法で「母子健康手帳」と呼ばれているが、名称を規定しているわけではない。日本独自のシステムで、乳幼児死亡率の高い発展途上国からも注目されている。

 海外で母子手帳の普及などに取り組む国際母子手帳委員会の板東あけみ事務局長(69)によると、前身は、妊産婦の健康管理のため1942年に配られた「妊産婦手帳」。感染症や栄養失調による乳児の死亡率の高さも改善しようと、48年には「母子手帳」として子どもの健康管理も一元化された。当時は紙不足で、ガリ版刷りで20ページほどしかなかったが、手帳を持っていると砂糖やガーゼなどの配給を優先的に受けられるメリットもあった。

 現代でも、医療記録としての役割は大きい。ただ、赤ちゃんを迎える両親の気持ちや成長の様子を書く欄もあり、「家族にとっての育児記録」の面もある。記入欄は基本的には6歳までだが、20歳まで書き込める自治体もあり、使用期間は出産前後だけではない。父子家庭や祖父母が育てている家庭、同性カップルが養子縁組で子どもを迎えている家庭もあり、手帳を使うのは「母子」に限らない。

「お母さん」を中心の呼びかけに違和感

 都内在住の会社員山下健翼(けんすけ)さん(36)も、「母子手帳」という名前に疑問を抱いてきた。

 0~6歳の3人の子どもがお…

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