結婚後に感じた喪失感 だから菊間千乃さんは別姓を望む

聞き手・田渕紫織
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 弁護士で元フジテレビアナウンサーの菊間千乃さんは、選択的夫婦別姓制度の導入を望んでいます。夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定を「合憲」とする最高裁憲法判断を受けても活発に発言していますが、実は自身の結婚当初は、別姓を望んでいなかったといいます。結婚後に味わった「恐怖」について聞きました。

 私は結婚する時、夫婦別姓にしたいとは思っていなくて、むしろ「名字が変わるの(ハート)」という風で「10代か!」みたいな感じでした(笑)。

 40代で結婚したんですけど、20代とか30代で結婚した友達が「夫婦別姓だから事実婚!」と言っているのを見ていて、「そんなに、そここだわる?」ってむしろ思っていたタイプです。

 で、実際に結婚してみて名字が変わると、パスポート、通帳、カードと、とにかく色んな物の名前を変えていきますよね。

 みなさんその不便さをおっしゃるんですけれども、私はそれよりも、そのひとつひとつでの手続きのたびに、世の中から「菊間千乃」という名前が消えていく瞬間を味わったことが大きいです。

 自分がなくなっちゃうっていうことのものすごい喪失感とか、気持ちが落ちていく感じは、やってみないと私はわからなかったです。名刺以外に菊間千乃という名前はもうなくなったことの怖さ。公的書類にも法律上にもどこにもないんですよね。

 これで結婚して専業主婦としておうちにいるという方だったら、本当に世の中から自分という名前がなくなっていくという喪失感ってさらに大きいんじゃないかなと思い、夫婦別姓に関心を持つようになりました。

 今回、夫婦同姓の規定を「合憲」とした最高裁の憲法判断では、個別の裁判官の意見にも注目が集まりました。15人の裁判官のうち4人は「違憲」としましたが、そのうちの1人の三浦守裁判官の意見に心を打たれました。

 三浦裁判官は、改姓は「個人の人格の象徴を喪失する感情をもたらす」と書いています。私が改姓後に感じた、自分というものがなくなってしまうという何とも言えない感情を、一番最初にどーんと書いてくださっています。読んでいて元気が出ました。

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 この記事は、7月9日に朝日新聞社で行われたオンラインイベント「牧野紗弥さんと学ぶ『家族とジェンダー』」第2回の「私が『夫婦別姓』を選ぶ理由」の内容の一部です。

 第3回は7月20日午後1時から、上野千鶴子さんをゲストに「性別の呪縛 受験にも」をテーマに開かれます。詳細はhttps://ciy.digital.asahi.com/ciy/11004505別ウインドウで開きますから。(聞き手・田渕紫織)