「学芸員の顔が見える美術館に」 新生・滋賀県美の挑戦

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田中ゑれ奈
写真・図版
河野愛「こともの foreign object」2021年
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 約4年の休館を経て6月、大津市滋賀県立美術館(旧・滋賀県立近代美術館)が再始動した。開館記念として、地元ゆかりの気鋭の作家が結集したグループ展と、ユニークな角度で収蔵品を読み解く企画展を開催中。それぞれ、担当した若手学芸員が大いに個性を発揮している。

気鋭の12人、溶ける境界

 現代美術が専門の荒井保洋(やすひろ)学芸員(35)による企画は、滋賀ゆかりの若手作家12人を集めたグループ展だ。休館中、滋賀近美は県内各地に活動の場を移し、地域住民と交流しながら展覧会を開いてきた。今回はそのプロジェクトに参加した9作家に新たに3作家を加え、すべて新作で構成する。

展覧会を企画した人の名前、知っていますか? 記事後半では「学芸員の顔が見える」美術館のあり方について、保坂健二朗ディレクターがビジョンを語ります。

 タイトルは「Soft Territory かかわりのあわい」。テリトリー(なわばり)が重なるように、展示室内外で各作家の展示が緩やかに溶け合い、大きなインスタレーションの体をなしている。

写真・図版
度會保浩「庭」2021年(手前)、「境界の景色」2020~21年

 一つ目の展示室は、度會保浩(わたらいやすひろ)の作品群で始まる。レースの模様を写した板ガラスを窓のように壁一面に並べた「境界の景色」は、光を通しつつ外からの視線を遮るレースのカーテンをイメージさせる。社会と住空間のあわいをつなぐガラスが、展覧会の外から内へと鑑賞者をいざなう。

 河野愛の写真の被写体は、2019年末に生まれた自身の子だ。肌に埋めるように挟み込まれた一粒の真珠は、無垢(むく)さと同時に生々しい違和を感じさせる。新生児とコロナ禍をともに自身の生活に突如混入した「異物」と捉え、子の体を真珠を育む貝になぞらえることで、連綿と続く生命の循環を暗示している。

 一方、西川礼華(あやか)が…

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