「会いたかった」 渡辺えりさん、ひととき投稿者と語る

浜田知宏
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 「ひととき」の投稿者にじかに会って話がしたい――。俳優で劇作家の渡辺えりさんが、以前から熱望していた朝日新聞の投稿欄「ひととき」の作者を訪ねる企画が、6月下旬、オンラインで実現しました。笑いあり、涙ありの当日の様子を収録した動画は、朝日新聞Reライフプロジェクトのウェブページでご覧になれます。

もし、わが子だったら

 渡辺さんが、過去の掲載作から4組の投稿者を選び、その背景などに迫った。(投稿は地域により掲載されていない場合もある)

 最初に登場したのは、埼玉県所沢市の滝谷美佐保さん。昨年10月に掲載された「手作りのすいがらいれ」の投稿者だ。近所の駐輪場でたばこを吸いながら談笑するベトナム人の若者たちのために、夫の紘一さんが、空き缶で吸い殻入れを作ったエピソードをつづった。

 渡辺さんが掲載作を朗読したうえで、「(海外から来た若者たちが)劣悪な状態で働いていることもあると聞く。この方たちは?」などと質問。

 滝谷さんはこれまでにも、ゴミの出し方が分からない若者に代わり、大きなテーブルを処分場に運んだり、携帯電話をなくした女性に付き添って交番に行ったりしてきたことを説明した。「自分の子どもが外国で暮らしていたら、こんな世話焼きのおばさんが近くにいたら助かるんじゃないかと思って接している」と滝谷さんが話すと、渡辺さんは大きくうなずいた。

フランスからもオンラインで

 今回の企画は、ひととき誕生70年の記念イベントの一つで、渡辺さんと読者の双方向の交流を実現させようと実施。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、朝日新聞東京本社に設けたスタジオにいる渡辺さんと、自宅にいる投稿者らを、オンラインでつなぐ形になった。

 しかし、オンラインならではの利点も。フランスからの投稿者、アヤシュ理歩さんに参加してもらえたことだ。

 投稿作は「フランスで筑前煮」(昨年12月掲載)。コロナ禍のロックダウンで現地のレストランが休業し、食材を卸せなくなった業者が、期間限定で開いた小さな八百屋。そこに里芋やゴボウなど、普段は見かけない日本の野菜が並び、久しぶりに筑前煮を作ったことを書いた内容だった。

 スタジオの渡辺さんが、フランスでのコロナの流行状況や街の様子を尋ねる。やがて話題は、アヤシュさんが「初めて」というひととき投稿に至った経緯へ。以前読んだ記事の中に「書くことは、心の整理になる」という一節があり、心に残っていたというアヤシュさん。「コロナ禍で自粛生活が続くなかでも、新しいことに挑戦したかった。そして出来るならば明るい話題を届けたかった」と当時の心情を振り返った。

「こんなお姉さんが…」 涙ぬぐう

 そのほか、パッチワークが趣味の母の作品を、スマホでフリーマーケットに出品した体験談「フリマの売れっ子」(2017年3月掲載)では、投稿者の山田博子さんが母陽子さんと兵庫県の自宅から仲良く出演。学校に行くのをためらう小学生の娘と中学生の「お姉さん」の心温まる友情が描かれた「娘のソウルメート」(21年2月掲載)では、投稿者の小原藍さんとすみれさん親子に加え、「お姉さん」も登場した。自身も小学生のとき、学校が嫌で行きたくなかったことがあったという渡辺さんは、「こんなお姉さんがいてくれたら」と何度も涙をぬぐった。

 その後、「第2部」では、ひとときの愛読者として公募で選ばれた4人が、読み始めたきっかけや魅力などを、渡辺さんと語り合った。

 「10歳からひとときを愛読している」という東京都の小川睦子さん(42)は、「(コロナ禍で周囲と)話すことが出来ず、本心を聞くことができない時代。ひとときに書かれている何げない人の胸のうちを、自分の人生の肥やしとして知りたい」と話した。

 最後に渡辺さんは「コロナ禍だからこそ、こういうことができたんですが、実際にみなさんの顔や、楽しそうな表情を見ると、安心しますね。みなさんとお会いできてうれしかったです」と締めくくった。(浜田知宏)