最低賃金目安「政治決着」の予想も 詰めの協議始まる

野口陽、山本恭介、岡村夏樹
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 雇い主が働き手に払う「最低賃金」について、今年の引き上げ幅の目安を決める詰めの協議が13日、始まった。現行の全国加重平均902円からの引き上げをめざす労働者側と反対する経営者側の隔たりは大きい。最後は、菅義偉首相の「沽券(こけん)にかかわる問題」として、政治的な決着になるという予想も出ている。

 厚生労働省の中央最低賃金審議会による詰めの協議は13日午後2時から、東京都内で始まった。だが労使の溝は埋まらず、14日未明になっても続いた。

 最低賃金は例年、中央審議会が決める目安を参考に都道府県ごとの審議会が実際の引き上げ幅を決める。都道府県別では現在、最も低い秋田、高知など7県が792円、最も高い東京都が1013円と幅がある。

 審議会ではまず労働者代表と経営者代表が協議。まとまらなければ、識者などの公益代表が調整に入る。

 今回、労使が歩み寄らなければ、最終的には公益代表が政府の意向もくんで前年より3%程度上げる提案を出し、決着させるとの見立てが強まっている。菅首相が引き上げに強いこだわりをみせてきたからだ。

 首相は3月の経済財政諮問会議で「早期に全国平均1千円とすることをめざす」と表明。6月に決めた骨太の方針でも「感染症の影響で賃金格差が広がる中で、格差是正には最低賃金の引き上げが不可欠」と強調。前政権から3%の引き上げを続けてきた実績を踏まえ、「早期に全国加重平均1千円」をめざすと明記した。

 その意気込みに、厚労省幹部も7月上旬に予測していた。「首相の沽券にかかわる問題。引き上げ幅は3%近くになるだろう。骨太の方針の内容はそれだけ重い」

 経営者側は抵抗している。4月15日には日本商工会議所など中小企業3団体が初めて最低賃金についての共同会見を開き、現行水準を維持するよう訴えた。

 宿泊、飲食、交通などコロナ禍で経営が厳しい企業は依然多い。日商の三村明夫会頭(日本製鉄名誉会長)は菅首相や関係大臣、自民党二階俊博幹事長らと面会し「業況が悪化すれば、企業は雇用調整せざるをえなくなる」と理解を求めた。

 だが、自民党最低賃金が上がると見越し、中央審議会が結論を出す前から動き出している。

 自民党下村博文政調会長は7月12日、報道陣に2年ぶりとなる3%程度の引き上げ額の「イメージを持っている」と予言した。

 下村氏はこれに先立ち、首相官邸を訪れ、加藤勝信官房長官と面会。最低賃金引き上げで「(企業が負担する)コストについては、国が中小企業に対して支援をすべきだ」と訴え、中小・零細企業への支援を強化するよう求めたという。

 自民党としては、次期衆院選を間近に控え、中小企業の支持者らが最低賃金引き上げに反発して離反するのを防ぎたい思惑がある。このため、「選挙の時に地元で説明できる」(政府関係者)別の支援策が、衆院選前に打ち出されるという見方が広がっている。(野口陽、山本恭介、岡村夏樹)