市民社会から核兵器廃絶を 平和首長会議が新ビジョン

比嘉展玖、岡田将平
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 世界の8千以上の都市が加盟し、核兵器廃絶をめざす国際NGO「平和首長会議」(会長=松井一実広島市長、副会長=田上富久長崎市長ら)が13日、新たなビジョンを発表した。市民社会における平和意識の醸成など「平和文化の振興」を新たに盛り込み、記者会見した松井市長は「核兵器廃絶を市民社会の総意にすることに重点を置く」と述べた。

 会議は2003年、20年までの核兵器廃絶を目標とする「2020ビジョン」を策定。今年1月には「核兵器廃絶の実現はならなかったが、廃絶への一歩が確かなものとなった」と総括した。

 新ビジョンは、「持続可能な世界に向けた平和的な変革のためのビジョン」(PXビジョン)と名付けられた。「核兵器のない世界の実現」「安全で活力のある都市の実現」「平和文化の振興」の三つの柱からなる。前ビジョンのように「いつまでに核兵器廃絶を実現する」という目標年は設けていないが、今後5年間の行動計画では、今年1月に発効した核兵器禁止条約について、核保有国やその同盟国を巻き込んだ条約の批准国拡大の促進を掲げ、保有国などへの公開書簡を出すことや、加盟都市から自国政府への要請活動を展開することなどを明記した。

 芸術やスポーツを通した啓発などによる平和意識の醸成について、「市民に最も身近な存在である首長で構成される平和首長会議が今後果たしていくべき最も重要な役割」としている。

 当初、昨年8月に総会を開いてビジョンを策定する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期。条約発効など、核兵器廃絶に向けた機運が高まっていることから、今月7日にオンラインで開いた理事会で、新ビジョンを決めた。

 「2020ビジョン」を会長としてまとめた秋葉忠利・前広島市長は取材に「期限をつけることで核兵器廃絶という夢が『目標』となった」と意義を説明。国連の潘基文・元事務総長も賛同するなど世界の多くの人に目標として共有されたと述べた。

 核兵器禁止条約は平和首長会議が目標に掲げていた15年までには締結しなかったものの、2年遅れで実現した。秋葉氏は、核兵器廃絶についても「10年、20年遅れても目標達成と言える」と指摘。一方で被爆者が少なくなる中、「時間が経つにつれ、1945年の記憶が薄まる。未来への継承が重要だ」と強調した。(比嘉展玖、岡田将平)

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲(あきら)・国際運営委員の話 

 平和首長会議は、国際社会では国家と並ぶくらい重みのある集団と受け止められている。新たなビジョンで、核兵器禁止条約の批准の促進を打ち出したことは心強い。国内のほぼすべての市区町村が平和首長会議に加盟しており、日本政府にももっと強く働きかけないといけないということが行動計画から読み取れる。平和意識の醸成ということでは、都市の名前だけではなく市民たちが実質的にこの運動を支持する状態をつくっていけるかが重要だ。

平和首長会議の新ビジョンの骨子

《核兵器のない世界の実現》

 都市と市民が標的となる核兵器は市民の安心・安全な生活を脅かす最大の障害。核保有国やその同盟国に核兵器廃絶に向けた行動を要請することで政策転換を促す

《安全で活力のある都市の実現》

 人類の共存を脅かす飢餓・貧困などの解消、難民問題、人権問題の解決、環境保護といった多様な課題に取り組む

《平和文化の振興》

 市民一人ひとりが日常生活の中で平和について考え行動するという、より根源的に重要な「平和文化」を市民社会に根付かせ、平和意識を醸成する