50歳超えた防衛白書 「茶の間に国防を」から始まった

相原亮
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 2021年版「防衛白書」が13日、公表された。自衛隊の現状から国際情勢の分析まで幅広くカバーしており、国内外で読まれている。どのような経緯で生まれたのか。

 防衛白書が刊行されたのは1970年。当時は佐藤栄作内閣で、防衛庁長官中曽根康弘氏(故人)。後に首相となり、防衛費の対国民総生産(GNP)比1%枠を撤廃するなど、日本の安全保障政策に深く関与した政治家だった。

 発刊の狙いについて、中曽根氏は国会でこう語っている。「防衛問題を国民の皆さんにいろいろ議論して頂こう、茶の間に入れよう、タクシーの運転手さんからお手伝いさんに至るまで、防衛問題を議論して頂くようにしたい」。議論を通じて、「(防衛問題が)国民のものになっていく」とも語っていた。

 第1号は94ページ。21年版の5分の1程度の分量だ。柱立てをみると、「現代社会における防衛の意義」「日本防衛のあり方」「自衛隊の現状と諸問題」など、教科書的な色合いが強い。「一般論を国民の皆さんに読んで頂き、専門的なことは次の段階に譲ろう」(中曽根氏)との考えに基づいたものだ。

経済大国にはなるが軍事大国にならぬ」

 「防衛の意義」では、明治政府による近代国家建設に始まり、太平洋戦争の敗戦を経て、現在に至るストーリーを記述。当時は高度経済成長期まっただ中で、「1970年代は、日本の国力が世界に対して前例のない重みと影響力を持つ時代となろう」と予測。その上で、「日本は経済大国にはなるが軍事大国にはならない。(略)社会福祉と世界平和を中心とする国家の新しいあり方をめざして歴史的ちょう戦をしようとしているのである」と宣言していた。

 当時の国際情勢について、「米ソ両国の核による相互抑止を前提とする東西両陣営の対立と共存の関係を基本としている」と定義しつつ、「国際連合に加盟していない韓国、北朝鮮、中共(中国)等の国々がある」と指摘。「アジアの国際関係を複雑化する要因となる可能性をはらんでいる」と分析した。

 日米安保体制について、「われわれは核兵器と攻撃的兵器を持たない以上、日本の安全保障上、国際情勢に大きな変更のない限り、日米安全保障体制は必要である」と訴えている。日本の防衛力については、自衛隊装備の近代化によって「量質ともにかなりの進展をしたが、専守防衛への態勢をさらに一歩前進させる必要がある」などと記した。

 白書は外国も注視する存在だ。冷戦時代はソ連共産党機関誌プラウダから批判を受けたことも。近年は中国にまつわる記述について同国が反発している。(相原亮)