コロナが奪った「復興五輪」東京・大島町聖火リレー断念

池上桃子
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 伊豆諸島東京都大島町で、東京五輪聖火リレーの公道走行中止が決まった。リレーは、8年前の土砂災害で多くの犠牲者を出した町にとって「復興五輪」の象徴として位置付けられてきた。だが、開催日を目前に起きた新型コロナウイルスクラスター(感染者集団)を受け、「苦渋の決断」を迫られた。

 都心から南に約120キロの海上に浮かぶ大島町。島の中央部には標高758メートルの活火山がそびえ、豊かな自然に囲まれた観光地として知られてきた。

 7300人ほどが暮らす町を未曽有の災害が襲ったのは、2013年10月16日未明のことだ。台風26号が記録的な大雨をもたらし、町の至るところで土砂災害が発生。36人が亡くなり、3人が行方不明となった。

 8年がかりでインフラの復旧や住宅再建、砂防対策を進めてきた町が、心待ちにしていたのが東京オリンピック(五輪)・パラリンピックだった。

 14年に町が策定した復興計画には、「オリ・パラ開催にあわせ『元気な大島』を発信します」との文言を盛り込んだ。聖火リレーでは、災害の記憶を伝えるために被災地に整備されたメモリアル公園を出発し、被災地を走者が通過するコースが用意された。

 町の担当者は「聖火リレーは、毎年のように全国各地で災害が起こるなか、時間をかけて復興してきた様子を見てもらう機会でもあった」と話す。

 その思いは、各地で聖火リレーの公道走行が中止になっても変わらなかった。

 だが、コロナ感染が状況を一変させた。

 町内では9日、都内の島嶼(とうしょ)部で初となるクラスターが判明。都によると、感染者は同じ職場の同僚やその家族約30人に上った。町の担当者は「高齢者を中心にとても不安に思っている」と話す。

 聖火リレーは15日に迫っていた。予定どおりにリレーを開催すれば、町外から70~100人程度の大会関係者が訪れることになる。「聖火リレーの公道走行を中止したい」。町は9日、都の意向調査に対し、そう伝えた。

 三辻利弘町長は「土砂災害からの復興を見てもらいたいという気持ちがあり、正直、町としては『やりたい』という強い思いがあった」と話す。ただ、優先されるべきは町民の安全と安心と考えたという。「医療機関の少ない島で、感染者を増やすことは防がなければいけないし、住民の不安感もあった。苦渋の決断だった」。(池上桃子)