苦い記憶から脱したエース マウンド上で精神統一の祈り

木村浩之
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(13日、高校野球西東京大会 小平南10-0光丘)

 左手のグラブを右肩に添え、念じる。この回も落ち着いて投げよう。光丘のエース前田頼人(らいと)(3年)はマウンドに立つとまず、精神統一の祈りをする。

 昨秋の都大会1次予選で、2―21(5回コールド)という惨敗を喫した。途中から体力がなくなり、動揺して制球が乱れた。試合後、「こんな自分がエースでいいのか」と悩んだ。

 相棒の捕手、甲(かぶと)知成(3年)が支えてくれた。高校入学当初から、ともに「甲子園をめざそう」と誓い合った仲。内外角低めをつく投球練習を重ねた。ダッシュの練習では、周囲よりも「もう1本多く」の気持ちで走り込んだ。徐々に自信が芽生えた。グラブを肩にあてるしぐさは、この頃に始めた。

 この日、小平南戦の六回の守り。まだ2点差。これ以上離されたくないが、二つの四球を与えて2死一、二塁のピンチを招いた。また昨秋のような投球を繰り返すのか。すると、内野陣がマウンドに集まってくれた。前田は甲とグータッチして再び打者に向き合うと、思い切り腕を振った。遊ゴロに仕留め、無失点で切り抜けた。

 コロナ禍の影響で体力不足は否めず、終盤は点差が開いた。ただ、岡部博監督は「成長した。120%の力を出した」。

 試合後、前田は泣いていた。もっと長く、みんなと野球をしたかった。大粒の涙を手でぬぐいながら言った。「課題が残った夏だった。大学でも野球を続けて、もっと成長した姿をみんなに見せたい」=スリーボンド八王子(木村浩之)